渋谷慶一郎の「アンドロイド・オペラ」がウクライナで公演決定。戦時下の都市・リヴィウが示す文化が持つレジリエンス【3/3ページ】

「文化」が持つレジリエンスの力

 シュミロヴィチは、渋谷にオファーを出した理由を次のように説明した。リヴィウの文化プロジェクトの根底には、同地出身のユダヤ人SF小説家であるスタニスワフ・レム(1921〜2006)の存在がある。レムは1950〜60年代にアンドロイドなどを登場させながら「人間と非人間(機械/ロボット)のつながり」を思考した作家だ。レムの存在を起点にセクション内容を検討した際、アンドロイドを用いた作品を手がけている渋谷に白羽の矢が立った。また、大事な人の死という深い苦しみを文化芸術とともに乗り越えてきた渋谷のバックグラウンドそのものが、リヴィウ市が考える、文化芸術の力である「ケア」の体現者として適任であると判断された。

リヴィウ市文化戦略室アーティスティックディレクターのボフダン・シュミロヴィチ

 また、アンドロイドをはじめとしたテクノロジーに対して、シュミロヴィチは、先日視察した大阪公演のなかで展開されたアンドロイドとの対話のシーンを回想しながら、「ウクライナでは現在も毎月多くの命が失われており、それは皮肉にもロボットやドローンといった現代のテクノロジーによってもたらされている。テクノロジーは人を殺すために使うべきものではない。人を癒し、ケアするために使うべきであり、人間はテクノロジーと対話を重ねる必要がある」とコメントした。

左から、古木治郎(EU・ジャパンフェスト事務局次長)、ボフダン・シュミロヴィチ(リヴィウ市文化戦略室アーティスティックディレクター)、渋谷慶一郎(音楽家)、ユリヤ・ホムチン(リヴィウ市文化戦略室ディレクター)、有働由美子(アナウンサー)