20世紀美術を代表するアーティスト、ドナルド・ジャッド(1928〜1994)。その実践を、その制作と空間の関係性から再考する展覧会「ジャッド|マーファ展」が、2026年2月15日から6月7日まで、東京・神宮前のワタリウム美術館で開催される。
1960年代以降、ミニマリズムを象徴する立体作品で知られるジャッドは、70年代にニューヨークを離れ、メキシコ国境にも近いテキサス州マーファへと拠点を移した。彼はこの地で、町に残る既存の建築を生活と制作、そして展示の場として再構成し、自身の作品のみならず、ダン・フレイヴィンやジョン・チェンバレンら同時代作家の恒久展示を実現するため、チナティ財団を設立した。作品を一時的に展示するのではなく、空間そのものと不可分なかたちで恒久的に設置するという思想は、ジャッドの芸術観を根底から特徴づけるものだ。

Permanent collection, The Chinati Foundation, Marfa, Texas. Photo by Florian Holzherr, courtesy The Chinati Foundation. Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
本展では、1950年代に制作された初期の絵画作品から、1960~90年代の立体作品に加え、マーファにおいてジャッドが構想・実践した「空間」そのものを、ドローイング、設計図、映像、写真、資料などを通して多角的に紹介する。とりわけ、展示を「その場限りのパフォーマンスにしてはならない」という彼の強い信念が、作品と建築、土地との関係のなかでどのように具現化されたのかが明らかにされる構成となっている。
会場では、抽象表現主義の影響が色濃く見られる50年代の絵画作品が取り上げられる。一部は日本初公開となるものだ。また、60年代半ばから70年代にかけての立体作品、さらには10個のユニットを垂直に積み上げた「スタック」と呼ばれる90年代の作品例などが展示され、絵画から三次元へと移行したジャッドの造形的探究をたどることができる。


Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
また、本展では日本との関係性にも焦点が当てられる。1978年、ワタリウム美術館の前身であるギャルリー・ワタリにて開催された「ジャッド展」は、ジャッドにとって初来日となる重要な機会であった。その際の展示資料やカタログ、収蔵作品やドローイングを紹介するドキュメント展示を通して、和多利志津子との交流を含む、日本における受容の歴史も振り返られる。
展示ではマーファという場所そのものも主題となる。1971年に初めてこの地を訪れて以降、ジャッドは既存建築を尊重しつつ改修を施し、アート、建築、土地を調和させる独自の空間を形成していった。そこには、空間、プロポーション、素材の重要性に対する彼の一貫した思想が反映されている。ドローイングや図面、地図、写真を通して示されるのは、作品の制作・設置・展示と生活を不可分のものとして捉える、ジャッドの包括的な実践である。

なお会期初日の2月15日には、シンポジウム「JUDDを考える」が開催。建畠晢(美術評論家)、蔵屋美香(横浜美術館長)、フレイヴィン・ジャッド(ジャッド財団共同代表)、佐藤可士和(クリエイティブディレクター)、青木淳(建築家)、中原慎一郎(コンランショップ・ジャパンCDO)らが集い、作品論からデザイン、建築、空間論に至るまで、ジャッドの多面的な影響を検証する場となる予定だ。
「私にとって、ここは何もない田舎ではない。世界の中心なんだ」。マーファについてそう語ったジャッドの言葉が示すように、本展はたんなる回顧展ではなく、アートと空間の関係を根源から問い直す試みとなるだろう。

























