シャネル文化基金と上海当代芸術博物館による新たな「劇場」。演劇、パフォーマンス、美術展の枠組みを越える実験【2/2ページ】

 展覧会は5つのセクションから構成されている。導入部「荒原」では、パフォーマーたちのエネルギーが蓄積され、様々な状況がめまぐるしく変化。観客もその流れに巻き込まれていく。「経緯」では、77名(組)のアーティストによる手紙、日記、詩、写真などが展示され、個人的な記憶や未完の思いが綴られる。「影像」では、2000年前後生まれの若いアーティストたちが、メディア論、テクノロジー、エコロジー、記憶といったテーマに挑み、世代独自の視点を提示する。

「荒原」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「経緯」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「影像」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館

 「瓦舍(がしゃ)」は感情の交差点として、観客とアーティストが予期せぬ相互作用を生み出す場となり、「廃墟」では都市化が進むなかで消えゆく風景が描写される。アーティストたちは絵画という行為を通じて、記録されることのなかった物語を浮かび上がらせている。

「瓦舍」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館
「廃墟」の展示風景より © CHANEL © 上海当代芸術博物館

 初日のパフォーマンスは、演劇、音楽、ダンス、ライブ・ペインティングなど多様な形式で行われた。会場では、その記録映像が複数のスクリーンで非線形的に上映されている。映像は会期中にも更新され、変化を続ける空間として展開される。また、パフォーマンスに使用された小道具が展示空間に点在し、来場者の想像力を刺激する演出となっている。

 演者・観客・空間の関係性を再構築する試みであり、文化の実験場としての「劇場」をぜひ会場で目撃してほしい。

編集部