展覧会は6章構成。第1章「たんなるモノ」では幕末の写真家・島霞谷が撮影した《鮎》と《頭蓋骨標本》、モノを撮影することを実験的に思索した大辻清司の「大辻清司実験室」に掲載された作品、日常を独自の表現として昇華した川内倫子の《M/E》を展示する。
第2章「記録と美」では、写真家・横山松三郎が担当した、明治政府による文化財保護への初めての施策「壬申検査」によって撮影された、正倉院宝物や仏像の写真など、重要文化財に指定されている壬申検査のガラス原板を紹介。作家性をおび始めた頃の古美術写真、そして仏像写真におけるそれぞれの眼差しを見る。
第3章「スティル・ライフ」は明治から大正にかけての日本において、写真に芸術性を求めるアマチュア写真家らを紹介。絵画的な写真を志向する、いわゆるピクトリアリズムと呼ばれる写真動向において、一部の芸術写真家ら二注目された静物写真に焦点を当てる。本章ではこうした各年代の静物写真とともに、母の遺品を撮影した石内都の《mother’s》や、物体を撮影することで他者からの見え方を模索する安村崇の《態態》を展示する。
第4章「半静物? 超現実? オブジェ?」では、モダンフォトグラフィの潮流のなかで、前衛的な写真表現をおこなった中山岩太や安井仲治などの作家の作品を展示。これにあわせて、オノデラユキの《古着のポートレート》、今道子の野菜や魚などの食材や、花や昆虫を素材として特異なオブジェを制作する作品などを展示し、前衛写真との共通項も探る。
第5章「モノ・グラフィズム」は、モノをめぐるグラフィックデザインとして、日本における初期の広告写真から、ポスターなどの広告にみられるグラフィック表現を紹介。また、ホンマタカシが猪熊弦一郎のアンティークコレクションを撮影した『物物』のプロジェクトを展示する。
第6章「かたちなるもの」では、新興写真や前衛写真に影響を受け「造型写真」という言葉で独自の表現を目指した坂田稔や、動植物を即物的に捉えた写真集『博物志』を発表した恩地孝四郎、日本の伝統的なデザインから「かたち」にフォーカスした岩宮武二らの写真を展示。また、日本の写真における抽象表現の先駆的な存在である山沢栄子や、カラフルなスポンジを組み合わせ造型化した鈴木崇の《BAU》など、本章ではモノの「かたち」に着目した写真家の作品を紹介する。
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