東京・麻布台の麻布台ヒルズ ギャラリーで、東京では約35年ぶりとなるアレクサンダー・カルダー(1898〜1976)の個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が開催される。会期は5月30日〜9月6日。
カルダーは1898年、米ペンシルベニア州ローントン生まれ。古典的な芸術家の一家に生まれ、針金を曲げたりねじったりすることで立体的な人物を空間に「描く」という新しい彫刻の手法をあみだし、芸術活動をスタートさせた。吊るされた抽象的な構造物がバランスを保ちながら動く「モビール」の発明でよく知られており、初期はモーターで動いてたいものも、やがて気流や光、湿度、人間の相互作用に反応して動く作品へと変化していった。
カルダーはキネティック・アートの先駆者のひとりであり、そして絵画、ドローイング、版画、宝飾品など、数多くの作品を制作して幅広い分野で活躍。1950年代以降は海外からの制作依頼に関心を向け、ボルトで固定した鉄板を使った屋外彫刻は世界中の公共空間で見ることができる。日本でも作品20点以上が国内18ヶ所の美術館に収蔵されている。
本展のテーマは、アメリカのモダンアートを代表するカルダーの作品と、日本の伝統や美意識との永続的な共鳴。カルダー財団理事長であるアレクサンダー・S・C・ロウワーのキュレーションとペース・ギャラリーの協力のもと、カルダー財団が所蔵する30〜70年代までの作品約100点で構成され、代表作であるモビール、スタビル、スタンディング・モビールから油彩画、ドローイングなど幅広い作品を展示する。
会場デザインを担当するのは、長年のカルダー財団の協力者でもあるニューヨーク拠点の建築家・ステファニー後藤。カルダーが同時代の偉大な建築家たちとコラボレーションしていた精神にならい、3:4:5の直角三角形の幾何学にもとづいた設計で、日本建築の要素や素材を展示空間に取り入れる予定だ。
なお、本展は7月に麻布台ヒルズ内にオープンするペース・ギャラリーと麻布台ヒルズ ギャラリーとのパートナーシップの一環として開催。今回の展覧会に合わせ、ペース・パブリッシングより日英版のカタログも出版される。
本展に際し、キュレーションを務めるロウワーは以下のコメントを寄せている。
祖父の作品には、日本の伝統と共鳴する繊細さと優美さがあり、崇高で儚いものに対する深い敬意があります。「カルダー:そよぐ、感じる、日本」では、祖父のモビール、スタビル、スタンディング・モビールが思索と自己創造のための空間をつくりだす様をご覧いただけます。カルダーが終生抱いていた日本の美学と文化への憧れに寄り添い、彼が制作において取り組んだ不均衡性や非対称性、近似性の中にある自由さにもとづいて、直感的にキュレーションしています。
(プレスリリースより)