2024.2.5

宇野亞喜良の大規模展が東京オペラシティ アートギャラリーで開催。900点を超える作品で仕事の全貌を見る

イラストレーター/グラフィックデザイナーの宇野亞喜良の全仕事を網羅する大規模展「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」が、東京オペラシティ アートギャラリーで開催される。会期は4月11日〜6月16日。

『きんのおの』原画 2017 ©︎AQUIRAX
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 イラストレーター/グラフィックデザイナーの宇野亞喜良(うのあきら、1934〜)の初期から最新作までの全仕事を網羅する、過去最大規模の展覧会「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」が、東京・新宿の東京オペラシティ アートギャラリーで開催される。会期は4月11日〜6月16日。

演劇実験室◎天井棧敷公演『星の王子さま』ポスター 1968 ©AQUIRAX

 宇野は1934年愛知県名古屋市生まれ。名古屋市立工芸高等学校図案科卒業。1955年に上京し、カルピス食品工業、日本デザインセンター、スタジオ・イルフイル、スタジオReを経てフリーランスに。1950年代から企業広告や演劇ポスターや絵本を手がけるようになり、イラストレーターとしても活動を開始。1960年代末には演劇実験室・天井棧敷などのアングラ演劇ポスターや舞台美術を担当するなど、時代の寵児として脚光を浴びた。1990年代からは展覧会のキュレーションや舞台の美術監督を務め、近年は俳句とのコラボレーション作を発表するなど、現在も多彩な分野で活躍している。1999年には紫綬褒章を、2010年には旭日小綬章を受賞した。

宇野亞喜良 photo: 大童鉄平

 宇野の仕事を振り返る大型個展は、2010年に刈谷市美術館で開催されて以来14年ぶり、東京では初の開催となる。本展は900点を超える作品群によって膨大な宇野の仕事の全貌を12章にわたって紹介するものとなる。

「三井信託銀行」ポスター 1971 ©︎AQUIRAX

  第1章プロローグの「名古屋時代」では、学生時代に描いたスケッチやクロッキーなど、創作初期の作品を紹介。毎日新聞社主催のデザインコンペで入選を重ね、19歳でグラフィックデザイナーの登竜門だった日本宣伝美術会(日宣美)で入選を果たすなど、早くからデザイナーとしての才能を開花させていたことなどを確認する。

 第2章「グラフィックデザイナーとしてのスタート」では、宇野の上京後の仕事を見る。グラフィックデザイナーとして華々しい躍進を始めた時代の宇野の、和田誠とともに一等を獲得した興和新薬の蛙のイラストレーションや、カルピス食品工業の新聞広告などの貴重な原画を紹介する。

「カルピス」(カルピス食品工業)広告原画 1956頃 刈谷市美術館蔵 ©AQUIRAX

 第3章「グラフィックデザイナーとして手がける企業広告」は、数々の広告制作の現場に携わった宇野の仕事を紹介。所属していた日本デザインセンターで宇野は、東芝やトヨタ自動車などの企業広告を担当。旭化成工業「カシミロン」を題材とするポスターは第10回日宣美展で会員賞を受賞した。また、化粧品のマックスファクターの広告シリーズも手がけている。

「スタジオRe」ポスター 1965 ©AQUIRAX

 第4章では「3本のアニメーション映画」では、1960年代に宇野は『白い祭』、『お前とわたし』、『午砲(ドン)』という3本の短編アニメーション映画を発表している。本展では、それら3本のアニメ作品をすべて上映する。

 第5章で「膨大なポスター作品」は、宇野は、現在に至るまで膨大な数のポスターを手掛けてきた。豊富な印刷知識と描写力が存分に発揮された、独特のファンタジーやエレガンス、エロティシズムが漂うポスターを一挙に展示する。

「ミケランジェロの言葉」ポスター 1968 ©AQUIRAX

 第6章「数多くの絵本、児童書」では、宇野が手がけた70冊あまりの絵本や多くの児童書を紹介。『どうぶつ えとおはなし』(1957頃)や『青い鳥』(1957頃)、横尾忠則と企画した『海の小娘』(1962)、今江祥智との『あのこ』(1966)など、愛らしい動物から大人びた少女まで、物語や著作によって自由自在に画法を変えて生み出した、バリエーション豊かな絵本や児童書を見ることができる。

『あのこ』原画 1966 ©AQUIRAX

 第7章「独特のエロティシズムを感じさせる版画集、作品集」では、宇野が自身の表現のスタイルを前面に押し出した1970年代から80年代にかけての活動を紹介。自分の表現スタイルをあらためて見直すための版画集や作品集などを展示する。

 第8章「表現の幅を広げる新聞、雑誌の仕事」は、宇野が長期にわたって携わった新聞や雑誌の仕事を紹介。記事の内容、著者の嗜好、印刷の仕様などにも目配りし作風や画材を使い分ける柔軟性によって、振幅のあるイラストレーションがつくり出されていることを紹介する。

『母の友』(1964年9月号)表紙原画 1964 刈谷市美術館蔵 ©AQUIRAX

 第9章「書籍の装幀」は、1960年代から現在にいたるまでの宇野の書籍の装幀を展示。本という存在を好む宇野にとっての、創作意欲がかき立てられる場を紹介する。

「ことわざはお好き?」『恋する魔女(For Ladies)』口絵原画 1966 ©AQUIRAX

 第10章「自由さが醍醐味の絵画、立体作品」は1987年以来続いている宇野の個展にフォーカスを当てる。00年代の石粉粘土で制作した人型のオブジェも見どころとなる。

餃子姫 2013 ©AQUIRAX

 第11章「総合的に舞台をプロデュース」では、1990年代以降に宇野が集中的に携わった演劇舞台に着目。舞台装置や衣装、メイク、演出や脚本に至るまで、演劇全体の総合的なプロデュースも実施している。

Project Nyx『第4回公演 星の王子さま』衣装原画 2009 ©AQUIRAX

 第12章「多方面から支持を得る近作、そして新作」では、松尾芭蕉や寺山修司らが詠んだ句をテーマとした新作や、SHAKALABBITSや、BUCK-TICK、椎名林檎らのポスターやグッズ、さらに資生堂「マジョリカ マジョルカ」の似顔絵ジェネレーター「マジョリ画」(2016)など、さまざまなクリエイターや企業とのコラボレーションなどを紹介する。

龍の落とし子 2020 ©AQUIRAX