蜷川実花、豊嶋康子からマリー・ローランサン、キース・ヘリングまで。今週末に見たい展覧会ベスト9

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」の展示風景より、《Intersecting Future 蝶の舞う景色》

匂いや触感、音楽、食など五感で体験する。「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」(TOKYO NODE GALLERY)

 写真家・映画監督として知られる蜷川実花にとって過去最大規模の個展「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」が、今年10月にオープンした虎ノ門ヒルズにあるTOKYO NODE GALLERYで始まっている。レポート記事はこちら

展示風景より、《Flashing before our eyes》

 本展で蜷川は、宮田裕章(データサイエンティスト)、Enzo(セットデザイナー)らとともに結成したクリエイティブチーム「EiM(エイム)」による没入型のインスタレーションをメインに展開。「桃源郷」をテーマに、匂いや触感、音楽、食など五感での体験を重視した設計となっている。

 会場を進むにつれて、緩やかなストーリーに沿った、蜷川特有の極彩色の空間に包まれていくことができる。TOKYO NODEの特徴でもあるドーム型空間の形状を生かしたダイナミックな映像や360度が花に囲まれた空間、中国・宋の思想家である荘子の説話として知られる『胡蝶の夢』に由来する映像インスタレーションなど、幻想的な空間を歩く体験を味わうことができる。

会期:2023年12月5日〜2024年2月25日
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C
住所:東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F
開館時間:10:00〜20:00(火〜17:00、金・土・祝前日〜21:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:年末年始
料金(平日):一般 2300円 / 大学・高校生 1800円 / 小・中学生 600円
料金(土日祝):一般 2600円 / 大学・高校生 2000円 / 小・中学生 800円 

国宝とともに三井家伝来の貴重な能面を楽しむ。「国宝 雪松図と能面✕能の意匠」(三井記念美術館)

 東京・日本橋の三井記念美術館で、年末年始の恒例となっている国宝 円山応挙筆《雪松図屏風》の展示。この屏風ととともに同館コレクションの能面を見ることができる展覧会「国宝 雪松図と能面✕能の意匠」がスタートした。レポート記事はこちら

展示風景より、円山応挙筆《雪松図屏風》(18世紀後半)と能装束

 会場には三井家伝来の貴重な能面の数々が並ぶ。展示室の最奥部に展示されている《雪松図屏風》の周りを囲むように華やかな能装束も展示されており、年始を控えたこの展覧会を華やかに彩っている。

 また展覧会の後半は、能面の表情をつくる要となる「目」と「口」に焦点を当てた作品が紹介。最後は、今年10月に逝去した能面作家・橋岡一路より新寄贈された能面が飾られており、三井家とも関わりが深かったという橋岡の功績をじっくりと堪能できる。

会期:2023年12月7日〜2024年1月27日
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(1月8日は開館)、12月25日〜1月3日、1月9日
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下 無料

豊嶋康子の制作の全貌を総覧する。「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」(東京都現代美術館)

 現代作家・豊嶋康子の美術館における初の大規模個展「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」が、12月9日より東京都現代美術館で開催される。

 豊嶋は1967年生まれ。90年に発表された初期作品《エンドレス・ソロバン》や《鉛筆》といった、物の使用法や構造に従いながら機能を宙吊りにする表現方法に始まり、その後30年以上にわたって、人々を取り巻く様々な制度や価値観、約束事に対して「私」の視点から独自の仕方で対峙し続けてきた。

 本展は、こうした豊嶋の制作の全貌を、初期作品から新作までの約400点から検証する初めての試みとなる。作家としてのデビューを飾った《マークシート》や《エンドレス・ソロバン》を、全面修復のうえ33年ぶりに公開。オリジナルのインスタレーションを受け継ぐかたちで展示される。

会期:2023年12月9日〜2024年3月10日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
開館時間:10:00〜18:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月(ただし1月8日、2月12日は開館)、12月28日~1月1日、1月9日、2月13日 
料金:一般 1400円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1000円 / 中高生 600円 / 小学生以下無料

美術史の流派に収まらない画家。「マリー・ローランサン ─時代を写す眼」(アーティゾン美術館)

 20世紀前半に活躍した女性画家、マリー・ローランサンの画業を複数のテーマから紹介する展覧会「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」が、12月9日にアーティゾン美術館でスタートする。

マリー・ローランサン 二人の少女 1923

 ローランサンは、キュビスムの画家として紹介されることも多くあるが、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史のなかにうまく収まらない存在でもある。同時代の画家マティス、ドラン、ピカソ、ブラックなどに影響を与えられながらも、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出した。

 本展では石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本などの資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点を展示。関連画家たちの作品と比較しつつ、彼女の作品の魅力に迫る。

会期:2023年12月9日〜2024年3月3日
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2 
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00、2月23日を除く) ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月(1月8日、2月12日は開館)、12月28日〜1月3日、1月9日、2月13日 
料金:ウェブ予約チケット 1800円 / 窓口販売チケット 2000円 / 学生無料(要ウェブ予約) ※日時指定予約制

キース・ヘリングの世界観を体現する。「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」(森アーツセンターギャラリー)

 80年代後半のニューヨークのアートシーンを代表するストリート・アートの寵児のひとりであり、HIV・エイズ予防啓発運動や児童福祉活動を行ったことでも知られるキース・ヘリング。その大規模個展が森アーツセンターギャラリーで開催される。

キース・ヘリング ニューヨーク市営地下鉄にて 1982-83 Photo by © Makoto Murata

 ヘリングは1980年代初頭にニューヨークの地下鉄駅構内で、使用されていない広告板を使ったサブウェイ・ドローイングと呼ばれるプロジェクトで脚光を浴びた。アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアとともにカルチャーシーンを牽引し、国際的に高い評価を受ける。

 本展ではアイコニックなモチーフから、6メートルの大型作品まで、キース・ヘリングの世界観を体現する150点が一堂に会する。また、活動初期のサブウェイ・ドローイング、トレードマークとなったモチーフによる作品《イコンズ》や彫刻、ポスター、晩年の大型作品まで、へリングのアートの歴史を東京で体感できる貴重な機会となる。

会期:2023年12月9日~2024年2月25日
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
開館時間:10:00〜19:00(金土〜20:00、12月31日~1月3日は11:00~18:00)※入場は閉館の30分前まで ※事前予約制(日時指定券)
休館日:会期中無休
料金:一般 2200円 / 中学・高校生 1700円 / 小学生 700円

ローマ建国から近代までの歴史と芸術を紹介。「永遠の都ローマ展」(東京都美術館)

 「永遠の都」と称されるローマの歴史と芸術を紹介する「永遠の都ローマ展」が12月10日まで東京都美術館で行われている。レポート記事はこちら

展示風景より、《カピトリーノのヴィーナス》(2世紀) ※東京会場限定展示

 教皇のコレクションを核に設立され、1734年に一般公開が始まったカピトリーノ美術館。本展では同館の所蔵品を中心に、ローマ建国から古代の栄光、教皇たちの時代から近代まで、約70点の彫刻、絵画、版画などが紹介されている。

 とくにヴィーナス像に典型的な恥じらいのポーズをとる彫刻で、カピトリーノ美術館以外では滅多に見る機会がない門外不出の作品である《カピトリーノのヴィーナス》は東京会場限定で展示。年代順で構成された5章のほか、展示の最後では日本と同館の関係を紹介する特集展示コーナーも設けられている。

会期:2023年9月16日〜12月10日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:050-5541-8600 
開室時間:9:30〜17:30(金〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
料金:一般 2200円 / 大学生・専門学校生 1300円 / 65歳以上 1500円
※土日・祝日のみ日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)

固有の鑑賞体験が生まれる芸術祭。「さいたま国際芸術祭2023」(旧市民会館おおみやほか)

 文化芸術を生かした地域の活性化、都市の魅力向上を目指し、文化芸術都市としてのさいたま市を創造するため、国内外のアーティストとともに2016年に第1回が実施された「さいたま国際芸術祭」。その3回目が12月10日まで開催されている。レポート記事はこちら

展示風景より、さいたまの人々のポートレイトを日替わりで展示する「ポートレイト・プロジェクト」

 これまで芹沢高志、映画監督・遠山昇司(公募)がディレクターを務めてきた同芸術祭。今回のディレクターも公募で選ばれ、現代アートチーム・目[mé]がディレクションを手がけることとなった。

 今回のテーマは「わたしたち」。会場は「タイムベース」という考えのもと、会期中につねに変化し続ける構造となっており、「鑑賞者が『その日その時、そこにいること』を選んだ行為によって固有の鑑賞体験が生まれる芸術祭」が目指されている。

会期:2023年10月7日〜12月10日
会場:旧市民会館おおみや(メイン会場)ほか、市内の文化施設やまちなか各所
住所:埼玉県さいたま市大宮区下町3-47-8(メイン会場)
電話番号:048-767-5411(さいたま国際芸術祭実行委員会事務局) ※問い合わせ受付は、火〜土9:00〜17:00(会期中は日曜日も受付)
メイン会場 開館時間:日・火〜木10:00〜18:00、金・土10:00〜20:00 (最終入館は閉館30分前まで)
料金(1DAYチケット):一般 2000円、さいたま市民 1500円
料金(フリーパス):一般 5000円、さいたま市民 3500円 ※高校生以下は無料。

「復元」起点に4作家の新作が展示。「アートサイト名古屋城 2023 想像の復元」(名古屋城内の各所)

 名古屋を代表する観光名所である名古屋城で、「名古屋城 秋の特別公開」として4組のアーティストが史跡を活用し新作発表するアートプロジェクト「アートサイト名古屋城 2023 想像の復元」が12月10日まで開催されている。

 現在も復元作業が続く名古屋城。本展では、その築城にまつわる歴史や、近世城郭御殿の最高傑作といわれている「本丸御殿」を10年かけて復元した軌跡、日本随一の規模を誇る回遊式大名庭園である「名勝二之丸庭園」の復元に要した調査研究など、名古屋城が長い時間をかけて続けてきた「復元」という創造的な行為を起点に、そこからインスピレーションを受けた4組のアーティストが、名古屋城でしか成立しない屋外作品や参加型の作品を展開している。

 参加作家は玉山拓郎 + GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督。屋外で発光する大型インスタレーションやミニマルな作品群、庭園全体で展開する彫刻作品、「香り」をテーマにしたプロジェクト型作品など、多様な表現を楽しむことができる。

会期:2023年11月29日~12月10日
会場:名古屋城内の各所(本丸御殿南側、二之丸庭園、茶席、カヤの木ほか)住所:愛知県名古屋市中区本丸1-1
電話番号:052-231-1700 
開館時間:9:00~19:30(作品観覧時間10:00~) ※閉門20:00
料金:大人 500円 / 中学生以下無料 ※名古屋城内への入場料で「史跡・文化財の特別公開」「アートサイト名古屋城」を併せて鑑賞可能

サンローランのクリエイション歴史に迫る。「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」(国立新美術館)

 「クリスチャン・ディオール(DIOR)」でデビューし、その後自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表してから2002年に引退するまで、約半世紀にわたり世界のファッションシーンをリードし続けてたイヴ・サンローラン。その没後の日本では初めての大回顧展が、12月11日に国立新美術館で終了する。レポート記事はこちら

展示風景より

 本展は序章と11の章から構成。ディオールでのデビューから、ブランドとして初のコレクション、そして独自のスタイルを確立するまでを、テキスタイル作品110点のほか、イヴ・サンローラン自身が描いたグラフィック作品124点、写真作品30点、ジュエリー55点で紹介。サンローランの40年にわたるクリエイションの歴史を数々の作品を通して明らかにしている。

会期:2023年9月20日〜12月11日
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
料金:一般 2300円 / 大学生 1500円 / 高校生 900円

編集部

Exhibition Ranking