デジタル展覧会の新たなかたち? ベルトコンベアで歩いて作品鑑賞を

筑波大学情報システム系の岩田洋夫教授、武蔵野大学データサイエンス学部の石橋直樹教授、そして株式会社丹青社が、歩行感覚を体感しながらサイバー空間で作品を鑑賞できる新たな装置を披露した。

サイバーフィジカル美術館のイメージ

 コロナ禍になり、世界各国の美術館・博物館がデジタルで展覧会を公開する事例は増加した。いまや、PCやスマートフォンから世界の名作を鑑賞できる時代だ。そんななか、展覧会のデジタル活用において新たな可能性を示す事例が発表された。

 「サイバーフィジカル美術館」は東京都の「5G等先端技術サービスプロジェクト」の一環として開発されたもので、サイバー空間の美術館を実世界と同じように物理的身体運動(歩行)を伴いながら鑑賞できるというシステムだ。 手がけたのは、筑波大学情報システム系の岩田洋夫教授と武蔵野大学データサイエンス学部の石橋直樹教授、そして株式会社丹青社の3者。

 この装置は、「トーラストレッドミル」と呼ばれる14個のベルトコンベアを数珠つなぎにしたものがその中心となる。トーラストレッドミルは前後左右に任意の方向に動く床(歩行感覚)の役割を果たし、歩行者の動作をセンサーで認識。歩いた分だけ床を逆向きに動かすと、位置を変えることなく、好きな方向に好きなだけ歩くことができる。周囲には8台のプロジェクターによって壁と床と天井のすべてにバーチャル展示室の映像が投影され、歩いた分だけ映像も連動して動いていくというものだ。

 今回の「サイバーフィジカル美術館」では、アーティゾン美術館の実際の展示室と展覧会用造作壁の3Dモデルをもとに、サイバー空間にその様子を再現。トーラストレッドミルと組み合わせることで、同館の名画を美術館に行かずともリアルサイズで鑑賞することが可能となる。

 こうした取り組みの利点には、過去の展覧会を体感を伴って鑑賞できるアーカイヴ性が挙げられる。また、なんらかの理由で美術館に行けない人々に展覧会をパッケージで届けられるアクセシビリティの向上のほか、教育現場での活用も期待される。「サイバーフィジカル美術館」は2月27日~3月19日の期間、東京・西新宿の京王プラザホテル3階アートロビーで一般公開される。

編集部

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