新型コロナウイルスの影響で移動がままならないなか、福岡県立美術館はバーチャル空間に美術館を開館させた。「福岡県立バーチャル美術館」と題されたこのプロジェクトは、コロナ禍でも同館の所蔵作品を鑑賞してほしいという思いから生まれたもの。
バーチャル美術館は「高島野十郎の世界」「福岡県美のたからもの」「美術館紹介ムービー」という3つの部屋から構成されており、「高島野十郎の世界」では近年人気が高まっている画家・髙島野十郎の代表作品を高精細画像で掲載。また、「野十郎クイズ」や「野十郎こぼれ話」など、作家の人物像に迫るコンテンツも用意される。
このほか「福岡県美のたからもの」では、福岡や九州にゆかりのある約1万点の所蔵作品のなかから選りすぐりの絵画を抽出し、様々なテーマを設けて展示・解説。「美術館紹介ムービー」では1964年の福岡県文化会館から歴史を重ねてきた美術館のいまを、動画で紹介する。
コロナ禍によって、美術の世界では急激にデジタル化が進み、世界の主要美術館はオンラインビューイングやバーチャルツアーなどに力を入れている。日本でも昨年、国立科学博物館が「地球館」と「日本館」の展示室全体をバーチャルに閲覧できる「かはくVR」をローンチ。また東京国立博物館もその一部をVRで再現したバーチャルミュージアム「バーチャル東京国立博物館(以下、バーチャルトーハク)」を開設するなどの事例が積み重なりつつある。しかしながら県立単位でのこうした取り組みはまだ事例が少なく、今回の福岡県立美術館のプロジェクトはインパクトを与えそうだ。