2022.9.9

「みんなの椅子」展から梅津庸一、工藤麻紀子の個展まで。今週末に見たい展覧会ベスト8

今週に開幕する/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「みんなの椅子 ムサビのデザインⅦ」展の展示風景より
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実際に座れる近代の名作椅子。「みんなの椅子 ムサビのデザインⅦ」(武蔵野美術大学 美術館・図書館)

展示風景より

 武蔵野美術大学 美術館・図書館の近代椅子のコレクションから精選した約250脚を紹介する展覧会「みんなの椅子 ムサビのデザインⅦ」。その後期展示が始まった。

 同館は1967年の開館以来、コレクションの柱のひとつとして近代椅子を収集してきた。現在の所蔵数は400脚を超え、国内有数の規模を誇っている。本展では、コレクションの全容を紹介するとともに、近代椅子デザイン史を俯瞰することを試みる。

 会場は、近代以前から現代にいたるまでの椅子が全10章で構成(8章は前期会期のみ)。一部の展示品を除き、ほぼすべての椅子に座ることができ、五感を使って楽しむことができる。実際に座ることで椅子の機能、座り心地、デザインを体感してみてはいかがだろうか。レポートはこちらから。

会期:2022年9月5日~10月2日
会場:武蔵野美術大学 美術館・図書館
住所:東京都小平市小川町1-736
電話番号:042-342-6003
開館時間:12:00〜20:00(土日祝は10:00〜17:00)
休館日:水
料金:無料

陶作品を通して現代美術における「ものづくり」を考える。梅津庸一「緑色の太陽とレンコン状の月」(タカ・イシイギャラリー)

 「美術とはなにか」「人がものをつくるとはなにか」という根本的な問いについて、様々な角度から思考、実践してきた美術家・梅津庸一。その個展が9月10日にタカ・イシイギャラリーで開幕する。

梅津庸一 溶解、振動、目撃者 2019-2022 © Yoichi Umetsu

 昨年より、六古窯のひとつである信楽の製陶所を間借りして作陶を始めた梅津。明治時代から日本を下支えしてきた産業のひとつである「窯業」を起点に、現代美術における「ものづくり」について考察を深めている。また、陶芸における柳宗悦や河井寛次郎らによる民藝運動と、梅津が考えているそれに付随する「オリエンタリズムの功罪」を積極的に見出すことで、一連の作品も編み上げている。

 タカ・イシイギャラリーでの初個展となる本展では、梅津が近年新たに制作に打ち込む陶作品を中心に、30点以上の大小様々なドローイングと、大塚オーミ陶業株式会社の協力のもと制作された陶板作品を紹介する。

会期:2022年9月10日~10月8日
会場:タカ・イシイギャラリー
住所:東京都港区六本木6-5-24
電話番号:03-6434-7010
開館時間:12:00~18:00
休館日:日、月、祝
料金:無料

世界の新たな「顕れ」を露顕させる。田村友一郎「N」(KOTARO NUKAGA 六本木)

 「アジア・アート・ビエンナーレ2019」(台北)、「ヨコハマトリエンナーレ 2020」(横浜)、「国際芸術祭あいち2022」(名古屋)などの国際的な芸術祭で作品を発表してきたアーティスト・田村友一郎による個展「N」が、9月10日よりKOTARO NUKAGA(六本木)で開催される。

メインビジュアル

 既存のイメージやオブジェクトを起点にした作品を手掛ける田村。その作品は、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンス、舞台まで多彩なメディアを横断し、土地固有の歴史的主題から身近な大衆的主題まで幅広い着想源から、現実と虚構を交差させつつ多層的な物語を構築する。

 KOTARO NUKAGAでの初個展となる本展は、大きくふたつの世界をほのめかす、様々なオブジェクトの集合と、それらつながりの見えないふたつの世界に橋を渡す1枚のアナログレコードによって構成。アルファベットの「N」を起点に、異なる次元や位相、時代に置かれた事象に接続点をつくり出し、世界の新たな「顕れ」を私たちの前に露顕させる試みとなる。

会期:2022年9月10日~11月6日
会場:KOTARO NUKAGA(六本木)
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
電話番号:03-6721-1180
開館時間:11:00~18:00
休館日:日、月、祝
料金:無料

近代の芸術の展開をたどる。「自然と人のダイアローグ」(国立西洋美術館)

 1年半の休館を経て今年4月に再開館した国立西洋美術館。そのリニューアルオープン記念展として、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館との協働により近代の芸術の展開をたどる「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展が9月11日に閉幕する。

展示風景より、左からクロード・モネ《舟遊び》(1887)、ゲルハルト・リヒター《雲》(1970)

 本展では、開館から現在に至るまでの両館のコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真が集結。近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を展観する。

 初来日したフィンセント・ファン・ゴッホの晩年の風景画《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》やドイツ・ロマン派のカスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒターらの作品が展示。加えて、国立西洋美術館の新規収蔵品で、世界的に注目を浴びている北欧作家アクセリ・ガッレン=カッレラによる作品も初公開されている。キュレーターが本展裏側を語る「キュレーターズ・ボイス」はこちらから。

会期:2022年6月4日~9月11日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:09:30~17:30(金土~20:00)
料金:一般 2000円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料

マシュー・バーニーの名作がふたたび。「特別展示:マシュー・バーニー」(金沢21世紀美術館)

 マシュー・バーニーが1987年より取り組む「拘束のドローイング」シリーズ9番目の作品《拘束のドローイング9》を中心に、関連作品を紹介する「特別展示:マシュー・バーニー」が、9月11日まで金沢21世紀美術館で開催されている。

展示風景より Courtesy of Fergus McCaffrey Fine Art © Matthew Barney

 今回展示する《拘束のドローイング9》は、2005年に金沢21世紀美術館で開催されたバーニーの国内初の大規模個展で、「拘束のドローイング」シリーズの新作として世界初公開された作品。捕鯨や茶道といった日本文化をテーマに、映画、彫刻インスタレーション、写真など多彩なメディアで展開される本作品は、日本を中心に撮影され、バーニーの日本文化に対する新鮮なヴィジュアルの解釈が反映されている。

 また《拘束のドローイング9》の展示にあわせ、同名映像作品や同館コレクションの《拘束のドローイング8:誕生の裂片》もあわせて紹介。本展示を通じ、普遍的なテーマである人間の身体と環境、その関係性におけるバーニー独自の視点と作品世界を味わってほしい。レポートはこちらから。

会期:2022年5月21日~9月11日
会場:金沢21世紀美術館
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
電話番号:076-220-2800
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00)
料金:一般 450円 / 65歳以上 360円 / 大学生 310円 / 小中高生無料

身近な人々と過ごした親密な時をたどる。マーチ・エイヴリー「The Family」(BLUM & POE 東京)

 BLUM & POE 東京では、ニューヨーク出身のアーティスト、マーチ・エイヴリーの日本初個展「The Family」を9月10日まで開催している。

マーチ ・エイヴリー The Family 1970
Photo by Josh Schaedel © March Avery Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo

 エイヴリーは1932年⽣まれのアーティストで、現在もニューヨークを拠点に活動している。50年以上にわたるキャリアにおいて、⺟サリー、息⼦ショーン、孫娘デライラなど、親しい家族や友⼈と過ごした⽇常の⾵景をとらえ、作品に描いてきた。

 本展では表題作の《The Family》をはじめ、作家を象徴する油彩画と⽔彩画の作品群を紹介。身近にいる⼈たちとの関係性に温かいまなざしを向け、抽象画や具象的モチーフ、情緒的な⾊彩を融合させたマーチの特徴的な画⾵は、ありふれた⽇常のなかにある優美さを浮かび上がらせている。

会期:2022年7月16日~9月10日
会場:BLUM & POE 東京
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森5F
電話番号:03-3475-1631
開館時間:12:00~18:00
料金:無料

国内美術館初の個展。「工藤麻紀子展 花が咲いて存在に気が付くみたいな」(平塚市美術館で)

展示風景より

 現実と夢が混在した心象風景を描く画家・工藤麻紀子の、国内美術館では初となる展覧会「花が咲いて存在に気が付くみたいな」が、9月11日に閉幕する。

 工藤は1978年青森県生まれ。2002年に女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻を卒業し、2014年からの5年間は平塚市内にアトリエをかまえた。現在まで個展を中心に活動。現代の絵画表現を紹介するグループ展でも継続的に取り上げられるなど、日本のアートシーンを語るうえで欠かせない画家のひとりに数えられる。

 本展では、学生時代の作品から最新作まで、インスタレーション作品を含む約140点により、工藤の現在までの活動を紹介。工藤の作品との出会いは、現代の絵画表現に馴染みのない人にとっても、イメージのなかに身をゆだねる楽しさや発見をともなう体験をもたらしてくれるものとなっている。レポートはこちらから。

会期:2022年7月9日~9月11日
会場:平塚市美術館
住所:神奈川県平塚市西八幡1-3-3
電話番号:0463-35-2111 
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は16:30まで 
料金:一般800円 / 大学生・高校生500円 / 中学生以下、毎週土曜日の高校生は無料

緊張感とユーモアが交錯するサムライ。野口哲哉「this is not a samurai」(ポーラ ミュージアム アネックス)

 2018年の展覧会「中世より愛をこめて」以来、ポーラ ミュージアム アネックスでは4年ぶりとなる野口哲哉の個展「this is not a samurai」が9月11日に終了する。

野口哲哉 WOODEN HORSE 2020 高松市美術館蔵

 鎧兜をモチーフとした作品を通して、人間の内面性や多様性を問いかけてきた野口。見る人に感情を押し付けないニュートラルな作風は、様々な世代や国籍の人々に広く受け入れられている。また野口の作品には、樹脂や化学繊維といった現代的な素材を使われており、ある種作家独自のアイロニーでもある。

 本展では、野口の作品のなかから代表作の立体や平面など約40点と、本展のために制作された新作もあわせて展示。それに込められた優しさと悲しさ、人間への好奇心にあふれた野口の作品世界を堪能してほしい。

会期:2022年7月29日~9月11日
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~19:00 ※入場は18:30まで
料金:無料