2020年に東京都写真美術館で予定されていたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により延期を余儀なくされたマシュー・バーニーの『リダウト』や『拘束のドローイング9』などの作品の上映会。その再始動として、特集上映会マシュー・バーニー『リダウト』プラスが8月16日〜9月4日の期間で同館ホールにて開催される。
上映されるのは、バーニーの『リダウト』(2018)と『拘束のドローイング9』(2005)、『クレマスター』サイクル全5部作(1994~2002)に加え、『リダウト』に通底する他監督の映画4本。バーニーの制作歴を包括的にとえられる企画となる。
特集上映の中心となる『リダウト』は、バーニーが大学入学までを過ごしたアイダホ州でロケ撮影されたフィルムで、ロッキー山脈に隔てられ独自の文化を持つ、「天然の要塞のよう」な同州を描いたもの。その点を鑑み、イギリスの美術館ヘイワード・ギャラリーが「コロナ禍を予見」と発言するほど、示唆に富んだ作品だ。
関連上映は、サンリオ映画『星のオルフェウス』(1979)、アピチャッポン監督『ブンミおじさんの森』(2010)、ヴィゴ・モーテンセン主演『はじまりへの旅』(2015)、日本語吹替『ウルフウォーカー』(2020)の4作。ギリシャ神話やアートプロジェクトの一環である映画、アメリカの分離主義、野生オオカミの神秘性という『リダウト』が扱う要素を掘り下げられる構成となる。
また会期中には、『拘束のドローイング9』で衣装担当した村上美知瑠をはじめ、角田裕志や砂山典子、藤村シシン、清水宏一などのゲストを迎えるトークイベントも開催。当初の上映会の延期から2年以上が経過し、バーニーの制作を知る機会をお見逃しなく。