「樂焼」とは、安土桃山時代に樂家初代長次郎によって始まり、轆轤(ろくろ)や型を使用せず、手とへらだけで成形された陶器。その技法は「手捏(てづく)ね」と呼ばれ、わずかな歪みや厚みを特徴とし、侘び茶の思想を強く反映した造形から、多くの茶人に愛用されてきた。
本展では、初代長次郎や江戸時代の奇才・本阿弥光悦の作品など、重要文化財がかつてない規模で勢揃いする。今回メインとなる初代長次郎《黒樂茶碗 銘 大黒》(16世紀)は、千利休の侘び茶の真髄を表し、長次郎茶碗随一と謳われている。
展覧会名にある「一子相伝」は、秘伝を親が子ども1人にだけ伝えるという意味。この貴重な機会に、初代から当代(十五代樂吉左衞門)まで脈々と受け継がれてきた樂家450年の伝統と技を、現代の視点で見ることができる。
さらに充実度を増し、東京国立近代美術館に凱旋する今回、会期中は、十五代樂吉左衞門を迎えてのトークや、ゲストを交えての対談といったイベントが多数予定されている。