「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語り、生涯にわたって美人画を描き続けた日本画家・上村松園(1875~1949)。東京・広尾の山種美術館で、同館が所蔵するその作品全18点を一挙に展示する特別展「上村松園と美人画の世界」が開催される。会期は2020年1月3日~3月1日(展示替えあり)。
松園は京都で生まれ育ち、京都府画学校(現・京都市立芸術大学)で鈴木松年に学ぶ。その後幸野楳嶺、竹内栖鳳に師事し、技法の習得に励んだ。江戸や明治の風俗、和漢の古典に取材した女性像を描いて早くから頭角を現し、文展や帝展など数々の展覧会に出品を重ねて活躍。美人画の名手として高く評価され、1948年には女性として初めて文化勲章を受章した。
山種美術館の初代館長・山﨑種二は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集した。《蛍》(1913)、《砧》(1938)、《牡丹雪》(1944)などの代表作を含む同館所蔵の18点は屈指の松園コレクションとして知られており、全作品が一堂に会すのは約3年ぶりの貴重な機会となる。
本展ではそのほかにも、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方や、その弟子の伊東深水、橋本明治など、近代・現代の画家たちが手がけた美人画の数々を紹介。また、仏画を思わせる神秘的な女性像を描いた村上華岳《裸婦図》(1966)をはじめ、古画や文学などに取材し、日本画において幅広く展開した女性表現にもスポットを当てる。
本展では日本画における美人画の世界の豊かな広がりとともに、季節を感じさせる衣装や丹念に描かれた日本髪、繊細な表情を見せる目元や指先など、松園芸術の粋を堪能することができるだろう。