時代の移り変わりととも現れる様々な「家族」「家庭」のかたちを、多彩な美術作品を通して探る展覧会「アカルイ カテイ」が、広島市現代美術館で開催される。会期は12月21日~2020年3月1日。
起点となるのは、1939(昭和14)年に上梓された『明るい家庭』という1冊の本。同書では家庭を明るく保つための女性のふるまい方が説かれ、冒頭では、料理の味を生かすも殺すも塩次第だという側室の説明に得心した徳川家康のエピソードを引き、家庭において女性はいわば「調味料」の役割を果たすべきだと暗にほのめかされている。
しかし現代においては家庭の崩壊や格差に関するニュースがたびたび報じられるなど、そのあり方も多様になっている。本展では、様々な世代の作家の創作活動に「家庭」「家族」がいかなる影を落とし、いかなる光を照らしているのかを展観する。参加作家は出光真子、植本一子、潮田登久子、江上茂雄、桂ゆき、川村麻純、小西紀行、佐々瞬、ひろいのぶこ、森正洋(白山陶器)、和田千秋+愛語。
1940年生まれの出光はビデオ・アートのパイオニアとして、女性の視点で映像作品を手がけてきた。同じく40年生まれの潮田は、様々な家庭の冷蔵庫を正面からとらえた「冷蔵庫 ICE BOX」シリーズなどで知られている。また、桂(1913~91)は、コルクや布によるコラージュや油絵の具による細密描写で、約60年にわたって創作活動を展開した。
植本は写真家・エッセイストとして広告から雑誌まで幅広く活動。川村は家族という普遍的な関係を主題として、映像と写真で他者との関係性に迫る作品を制作。そして佐々はある土地に関するリサーチをもとに、フィクションと現実を交差させるような作品を発表してきた。
「家族」「家庭」の成り立ちを紐解きながら、その多様なかたちを紹介し、これからの可能性を探る本展。「明るい家庭」をアップデートした先に見える「アカルイ カテイ」にじっくりと向き合うための機会となるだろう。