時代性を鋭く切り取る独自の表現世界を確立してきた横尾忠則。ビジュアル・アートから文筆活動まで幅広く活躍する横尾は、美術史の知識や探究心から生まれるバリエーション豊かな作品群で、つねに国内外から注目を集めている。
今回、そんな横尾が初の試みとして、公立美術館で自身の個展「自我自損展」をキュレーション。本展は現在、兵庫県神戸市の横尾忠則現代美術館で開催されている。会期は12月22日まで。
横尾は1936年兵庫県生まれ。神戸新聞社でグラフィックデザイナーとしての活動を経て、60年に上京。唐十郎、寺山修司、土方巽といった舞台芸術のポスターなどを数多く手がけた。その後、80年にニューヨーク近代美術館で開催されたピカソ展に衝撃を受け、画家に転向(画家宣言)。以降、幼少期の戦争体験を参照しながら様々な「死」のイメージを投影した作品や、自然風景や街中の「Y字路」を描いたシリーズ、俳優、ミュージシャンといったスターたちの肖像画など多様な作品を発表している。
本展タイトルの「自我自損」は、「エゴに固執すると損をする」という意味の造語。その背景には、自らの旧作に容赦なく手を加えて新たな作品へと変貌させ、同一人物とは思えないほど大胆にスタイルを変化させる横尾の自己否定的な制作、そして一貫したテーマである「自我からの開放」がある。
本展では、横尾自ら出品作を選定し、展示プランを考案。アートシーンを牽引してきた横尾の名を冠した美術館で、横尾はどのような試みを見せるだろうか。