公共空間の内/外を横断する。大山エンリコイサムがNYで最大規模の個展「INSIDE OUT」を開催中

独自のモチーフ「クイックターン・ストラクチャー」を用いた作品で知られるアーティスト・大山エンリコイサム。その個展「INSIDE OUT」が、ニューヨーク・マンハッタンに位置するオフィスビルのロビーを主会場とした「Tower 49 Gallery」で開催されている。会期は2020年8月まで。

大山エンリコイサム FFIGURATI #253 2019 Artwork © Enrico Isamu Oyama Photo © Jeffery Sturges

 大山エンリコイサムは、地下鉄や都市の壁などに描かれたライティング(グラフィティ)の、文字や色彩を取り除いた描線によって画面を構築する「クイックターン・ストラクチャー(以下、QTS)」を用いた作品で知られている。

 現在、日本で2つの個展「Kairosphere」(ポーラ美術館、7月28日まで)、「VIRAL」(中村キース・ヘリング美術館、11月10日まで)を開催中の大山。その新たな個展「INSIDE OUT」が、ニューヨーク・マンハッタンの「Tower 49 Gallery」で開催されている。

大山エンリコイサム FFIGURATI #254-#259 2019 Artwork © Enrico Isamu Oyama Photo © Jeffery Sturges

 「Tower 49 Gallery」は、オフィスビルのロビーを主会場としたスペース。約1年に1組のアーティストとキュレーターを選出し、展覧会とカタログの制作を行ってきた。本展のキュレーターは「ホワイト・キューブ・ニューヨーク」のアーティスティック・ディレクター、エリック・シャイナーが務める。

 大山は誰でも通り抜けが可能なロビーに、幅18メートルにおよぶ大型絵画や5枚組の作品などを展示。またビルの前のプラザ(広場)では、エントランスの柱にカッティングシートを用いてQTSを施工したパブリック・アートを展開している。

大山エンリコイサム FFIGURATI #92-96 2014
Artwork © Enrico Isamu Oyama Photo © Jeffery Sturges

 加えてビル24階の「スカイロビー」では、ファウンド・オブジェクトの上にQTSを配置したシリーズを見ることができる。同フロアは通常テナントの関係者しか入場できないが、会期中は受付に申し出れば一般客も入場可能となっている。

 現代美術やストリート文化など、様々な現代の文化領域の「横断」を体現するQTS。その形象は、屋外の公共空間(プラザ)、屋内の公共空間(ロビー)、そして屋内の半公共空間(スカイロビー)という、3つの空間を横断する本展の構成にも重ね合わされている。15年にわたる絵画や壁画の実践を経て、さらに多様な媒体に拡大されるQTSの進化系に注目したい。なお本展は2020年8月までの長期開催。ニューヨークに滞在する機会のある方はぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

編集部

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