藤幡正樹は1956年東京生まれのメディア・アーティスト。80年代初頭よりコンピュータ・グラフィックスとアニメーションの制作を始めると、その後コンピュータを用いた彫刻制作を経て、90年代以降はインタラクティヴな作品を発表してきた。
96年には、ネットワークをテーマにした作品《グローバル・インテリア・プロジェクト#2》でアルス・エレクトロニカ(リンツ)でゴールデン・ニカ賞を受賞。97年は「インタラクティヴな本」をテーマにした作品《ビヨンド・ページズ》が欧米を巡回し、同作はドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・センターに収蔵された。
アルス・エレクトロニカのほか、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレや、横浜トリエンナーレなどにも参加し、メディア・アートの先駆者として、つねに視覚をテーマに先鋭的な表現を追求してきた。
今回、藤幡の個展「E.Q.」が、銀座の東京画廊+BTAPで開催される。タイトルの「E.Q.」とは「equalize(イコライズ)」の略語。本来イコライズは数学で左辺と右辺を等式化することを指すが、技術の分野では歪んだ状態をフラットに戻すことをそう呼ぶという。
本展で藤幡は、メディアによる歪みはイコライズ可能なのかを探る。高解像度カメラを用いて鑑賞者の身体のイメージをリアルタイムで取り込み、コンピューターによって座標変換したものをプロジェクターで投影。定着されないデジタルメディア上のイメージとしてつねに移ろい続ける様子は、視ることとイメージの関係について再考を促すかもしれない。