いち早くビデオなどの新しい技術を作品に取り入れ、メディア・アートの先駆者として知られる山口勝弘。2018年5月に逝去した作家を偲ぶ展覧会が、東京・港区の横田茂ギャラリーで開催されている。
山口は1928年東京都生まれ、48年頃から抽象画を発表。50年代には偏光ガラスを用い、鑑賞者の動きによってイメージが変化する代表作「ヴィトリーヌ」シリーズの制作を開始する。60年代には様々な素材を取り入れ、天井や壁面を使った展示で「環境芸術」という新たな概念を提示した。
また個人の活動以外にも、51年からは詩人・瀧口修造の主導のもと、福島秀子や武満徹らとともに「実験工房」として活動。そして72年にはビデオによる芸術活動を目的とした「ビデオひろば」を結成し、新しいテクノロジーやメディアの可能性を追求した。
これら領域横断的な活動だけでなく、筑波大学教授(77~92年)、神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科教授(92~99年)として教育にも従事した山口。『不定形美術ろん』『ロボット・アヴァンギャルド』など、その著書も多い。
本展は、そんな山口の活動を包括的に紹介するもの。光を用いた彫刻や布張りの彫刻、ビデオ作品、後年のキャンバス作品などを見ることができる。