モネ、ルノワール、ピカソ、シャガールなどの作品を擁する、大手建材メーカー・吉野石膏株式会社による美術コレクション。そのうちの多くが山形美術館に寄託され、一部は「吉野石膏コレクション」として常設展示されている。
これまでまとまって紹介される機会のなかった同コレクションを、本格的に展覧する「印象派からその先へ―世界に誇る 吉野石膏コレクション展」が兵庫県立美術館(7月21日まで)を経て、10月に三菱一号館美術館に巡回。本展には、モネやピサロ、シャガールの初期から晩年までの名品など、選りすぐりの72点が集結する。
本展は「印象派、誕生」「フォーヴから抽象へ」「エコール・ド・パリ」の3章から構成。1章では、アカデミズムに対抗して卑近なモチーフを見出したクールベや、農民画を描いたバルビゾン派のミレーなど、印象派に先駆けた画家たちの作品を紹介。また、その後モネやルノワール、ドガ、セザンヌらがセーヌ川沿いの風景や都市生活の様子を描き、新たな挑戦へ向かっていく流れを追う。
続く2章では、マティスやマルケ、ルオーなど「フォーヴィスム(野獣派)」の作家たちによる、伝統と前衛のはざまにおける試行錯誤の様子を展観。また、ピカソやブラックによる「キュビスム」からカンディンスキーの抽象絵画、ポスト印象派のゴーギャンの流れを汲むボナールらによる「ナビ派」の実践まで、「モダン・アート」の諸相を照らし出す。
そして3章では、1920年代に活躍した「エコール・ド・パリ(パリ派)」の作家を中心に取り上げる。主に諸外国からパリへやって来たシャガールやモディリアーニ、そしてフランス生まれのユトリロらによる具象的かつ個性的で魅力ある作品の数々からは、20世紀美術の豊かな実りを見ることができるだろう。