奈良県の北東部はかつて大和政権が都を置いた土地として伝えられ、飛鳥時代には政治の中心地であった。ここに位置する岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の4寺はいずれも7~8世紀に創建された古刹で、魅力に富んだ仏像をいまに伝えている。
そんな4寺の仏像を紹介する展覧会「奈良大和四寺のみほとけ」が、東京国立博物館 本館11室で開催される。
岡寺は、飛鳥時代後期から奈良時代にかけて活躍した高僧・義淵僧正が開いた伝えられる寺。今回は、その歴史を裏付ける重文《天人文甎》、国宝《義淵僧正坐像》が出品される。いっぽう真言宗室生寺派の大本山である室生寺からは、国宝《十一面観音菩薩立像》など、同地で育まれた独特の仏教文化を伝える仏像を見ることができる。
長谷寺の本尊は、10メートルを超える《十一面観音菩薩立像》。奈良時代初頭につくられた後に焼失や再興を繰り返し、古来から人々の篤い信仰を集めてきた。本展では、本尊を模してつくられた、鎌倉時代の長谷寺式十一面觀音菩薩像の優品が展示される。
安倍文殊院は、蘇我氏が天智天皇と藤原鎌足によって滅ぼされた「乙巳の変」があった645年に建てられた寺。今回は、快慶作《文殊菩薩像》の像内から発見された国宝の経巻、文殊菩薩像像内納入品《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》を見ることができる。
これら国宝4件、重要文化財9件を含む名品が一堂に会する本展。卓越した造形と、篤い信仰の物語を堪能することができそうだ。