皇室ゆかりの宝物を所蔵する正倉院。その宝物と法隆寺献納宝物を一堂に紹介する御即位記念特別展「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」が、東京国立博物館で開催される。
正倉院とは、奈良県奈良市の東大寺大仏殿北北西に位置する、校倉造の高床式倉庫。元々は東大寺の倉庫であったが、明治以降は内務省や宮内省などの所管となり、1908年には帝室博物館の主管となった。現在は宮内庁の機関である正倉院事務所が管理している。
そして今回、その正倉院が1260年の長きにわたって守り伝えてきた正倉院宝物約9000点のなかから、約40件が東京国立博物館にやって来る。
正倉院宝物は、光明皇后が聖武天皇の遺愛品をはじめとする品々を東大寺大仏に捧げたことに由来しており、日本で製作された美術工芸品や文書類だけでなく、大陸から持ち込まれた品々も含まれている。
本展では、聖武天皇の遺愛品が献納された際の目録である国宝《国家珍宝帳》(756)や、その国家珍宝帳に記された20面の鏡のひとつ《平螺鈿背八角鏡》(8世紀)のほか、現存する唯一の五絃琵琶《螺鈿紫檀五絃琵琶》(8世紀)など様々な宝物を展示。
これらと同時に、本展では東京国立博物館が所管する法隆寺献納宝物も展覧。飛鳥・奈良時代を代表する法隆寺献納宝物は、1878年に法隆寺から皇室に献納されたもので、1947年に国へ移管された宝物300件を指す。正倉院宝物と双璧をなす文化財だ。
本展担当者で、東京国立博物館特別展室長・猪熊兼樹は展覧会の趣旨として、「正倉院宝物を中心に、法隆寺献納宝物を展示することで、古代の日本の国際色豊かな文化を紹介したい」と語る。
会場構成は「聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物」「華麗なる染織美術」「名香の世界」「正倉院の琵琶」「工芸美の共演」「宝物を守る」の6章。会場には正倉院宝庫の一部原寸大が再現され、宝物とともに、正倉院そのもののスケールも体験できる。
なお、東京国立博物館において、正倉院の特別展が最後に開催されたのは1981年。38年ぶりとなる本展は大きな注目を集めることだろう。