2019.3.2

俳優でミュージシャン、そして画家。ジョン・ルーリーがワタリウム美術館の個展で見せる、アナーキーな絵画世界とは

1978年にサックス奏者として登場し、俳優として様々な映画に出演。その後闘病を経て、現在は画家として制作を続けるジョン・ルーリーの個展「Walk this way」が、東京・外苑前のワタリウム美術館で開催される。会期は4月5日〜7月7日。

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 映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(ジム・ジャームッシュ監督)の主人公・ウィリーを覚えているだろうか。ギャンブル好きなこの主人公を演じたのは俳優であり、現在は画家として活動するジョン・ルーリー。今回、その個展「Walk this way」がワタリウム美術館で開催される。

 ルーリーは1952年アメリカ生まれ。78年、ギタリストのアート・リンゼイらと結成したバンド「ラウンジ・リザーズ」のサックス奏者として登場し、その後『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)、『ダウン・バイ・ロー』(1986)などジム・ジャームッシュ監督の映画に出演。俳優として独自の存在感を発揮した。

ジョン・ルーリー こちらへどうぞ 2014

 しかし、90年代後半に難病であるライム病を患い、音楽・俳優活動を休止。絵画制作に活動の場を移し、2004年からドローイングなどの発表を始める。06年には、ニューヨークのMoMA PS1で「John Lurie: works on paper」を開催。この頃から画家としてのルーリーが広く知られるようになり、10年にはワタリウム美術館で「ジョン・ルーリー展 ドローイング You are here」が開催された。

 過去にはジャン=ミシェル・バスキアと一緒に描いた経験を持ち、近年は生活の大半をカリブ海の島で過ごしているというルーリー。彼が描く世界は美しい夢のように見えるいっぽう、そこには痛烈な皮肉が込められている。また画面に登場する動物たちは自由を楽しみ、生き生きとした姿を見せる。

 同館では2度目の発表となる今回の個展。不条理な出来事が多くなったいま、ルーリーの描く自由でアナーキーな世界は、もうひとつの不思議な風景に私たちを誘い入れてくれることだろう。

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