2018.8.31

2018年の東京の風景。「梅沢和木 × TAKU OBATA 超えてゆく風景」がワタリウム美術館でスタート

「梅ラボ」の名でも知られるアーティストの梅沢和木と、彫刻家のTAKU OBATA。ふたりの初共演となる東京・外苑前のワタリウム美術館での展覧会「梅沢和木 × TAKU OBATA 超えてゆく風景」の様子を、コメントとともに紹介する。会期は9月1日〜12月2日。

展示風景より
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 インターネット上の画像を大量に集め、カオス的な画面として実空間で表現する梅沢和木と、B-BOY(ブレイクダンサー)ならではの身体表現技術と躍動を木彫で表すTAKU OBATA(小畑多丘)。ふたりが初共演する展覧会「超えてゆく風景」が東京・外苑前のワタリウム美術館で9月1日よりスタートする。

 梅沢和木は1985年埼玉県生まれ。2008年武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。「カオス*ラウンジ」のメンバーのひとりとして活動し、「梅ラボ」の名称でも知られる。

 TAKU OBATAは1980年埼玉県生まれ。2008年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。台座のない木彫による人体と衣服の関係性や、B-BOYの彫刻を端緒に生まれる空間を追求してきた。

展示風景より

 2階から4階まで3フロアで展開する本展。まず、 2階で目に飛び込むのは、壁一面を覆い尽くす梅沢の作品だ。2009年から18年まで、東日本大震災といった大きな出来事を経て変遷する作風をここでは見ることができる。

 そして、そこに佇むのが、マゼンタカラーの塗料「キナクリドン(Quinacridone)」から命名された《B-BOY AllDown  Quinacridone》(2018)と、一木造の《B-GIRL Down jacket NAGAME》 (2016)という、OBATAによる2体の彫刻作品だ。

展示風景より

 OBATAはこの空間について、「設営時、梅ラボの作品で埋め尽くされた展示会場を見たときに圧倒されてしまった。だけど、2体の彫刻を置くことで空間にばっちりはまって、彫刻の強さを実感しました。“和多利さん(ワタリウム美術館館長の和多利浩一)がやりたいことはこういうことだったのか”とすぐにわかりました」と話す。

TAKU OBATA B-BOY AllDown  Quinacridone 2018

 つづく3階と4階では、梅沢とOBATAがそれぞれ個展形式で作品を発表。3階のフロアでは、梅沢がインターネット上に存在する黒のイメージを中心に構成し、その上にペイントを施した作品群が一堂に集結している。「いまの段階ではまだ言語化できていない」という、梅沢作品の最新形だ。

梅沢の最新作が並ぶ3階の展示風景
展示風景より。右から梅沢和木《Imperishable Night》(2018)、windows0(2001)

 それら最新作に加え、インターネットに触れた喜びを、紙粘土、パソコンのパーツなどを組み合わせて制作したという高校生時代の立体作品《windows0》(2001)や、動画の作品《Eee PC View》(2015)なども並ぶ。

 4階の展示スペースでは、OBATAによる写真と映像作品が1点ずつ展示されている。青い背景に直方体の木彫が浮遊する《物体の空》(2018)と、特撮映画のようなセットをつくり、木彫を放り投げる様子を撮影した《Takuspe buttai Abstract》(2018)。

展示風景より。TAKU OBATA 物体の空 2018

 これらは、木彫を手がけるうえで重力や水平性をつねに考えてきたOBATAが「無重力のものをつくりたい」という思いを発端とした作品だ。自身がつくる人体像において、靴紐の部分がお気に入りだというOBATA。写真、映像でとらえられる直方体の木彫は、それぞれ靴紐部分がモチーフになっている。

(左から)TAKU OBATA、梅沢和木

 「いまの東京の風景」、そして「何よりもまず、自分自身が見てみたかった風景」と館長の和多利が語る、ふたりの作品が拮抗する空間。ぜひその目で確かめてほしい。