山本昌男は1957年愛知県生まれ。当初は画家を目指していたが、20代で写真の道に進む。94年にサンフランシスコで初の個展を開催したことがきっかけとなり、アメリカやヨーロッパを中心に知名度を高めていった。おもな写真集に『川』(書肆壷中天、2012)、『ゑ』(Nazraeli Press、2005)などがある。
山本は初期から一貫してモノクロームによる制作を行い、その静謐で詩的な作品やインスタレーションで知られてきた。今回の個展は、新作「BONSAI」などのシリーズから選ばれた作品によって構成される。
「BONSAI」は、盆栽家・秋山実を近所に知った山本が様々な盆栽と向き合うようになり制作を始めたシリーズ。深い黒の中に、小さな宇宙ともいえる盆栽の世界が浮かび上がるような作品となっている。
小さいものや些細な出来事のなかに光を探す自身の作品を、最小限の要素を用いて無限の広がりを表す俳句になぞらえて話すという山本。盆栽に深い興味を抱いたのは、ごく自然なことだったと言える。
今回の個展は、海外での発表が多い山本作品を見ることができる貴重な機会。盆栽とのひそやかな対話の結晶とも言える新作に注目が高まる。