ポラロイドで都市を探査する。築地仁の個展「母型都市」で見る、80年代のスクラップ・アンド・ビルドとは

都市を舞台とした写真を発表してきた築地仁の個展「母型都市」が、東京・六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催される。1984年に発表された作品より約25点を展覧する本展の会期は、2019年1月12日〜3月2日。

築地仁 母型都市 1983-1984 © Hitoshi Tsukiji / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

 築地仁は1947年神奈川県生まれ。独学で写真をはじめ、装丁家・菊地信義に写真の表現と思考の方法を学んだ。60年代から一貫して都市を被写体とし、『垂直状の、(領域)』(自費出版、1975)『写真像』(CAMERA WORKS、1984)などの写真集を発表してきた。

 築地が83年から84年にかけて取り組んだのが「母型都市」のシリーズ。4×5インチのポラロイドフィルムで都市の変容と再生、構築と解体を捉え、60点を超える作品群として結実した。本展では、同シリーズから約25点を紹介する。

 当時は、バブル崩壊以前のゴールデンエイジとも呼ばれる時代。築地は変容し続ける都市の現場に立ちながら、現実に起きる事柄を写真によって探査し、当時影響を受けていたニュー・トポグラフィクスの視点で都市の現在を図示することを試みた。

築地仁 母型都市 1983-1984 © Hitoshi Tsukiji / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

 タイトルの「母型都市」は、活版印刷に不可欠な、活字を鋳造する際に用いる金属製の鋳型を意味する「母型」に着想を得たもの。築地は変化する都市の様相の一片一片をポラロイドで鋳造・刻印するように撮影し、質量をもってまとめることで都市の構成要素と全体像を描き出している。

 「このプロジェクトにおいて、ポラロイド写真の現場で写してつくるという即時性がなければ、都市の現在・現場・現実の問題を浮き上がらせ、撮り、つくり、視て、考えるという私の写真の意識と感覚は明らかに出来なかったと思います」と語る築地。いまもなお見る者に思考を促すフォト・サーベイの断片を目撃したい。

編集部

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