EXHIBITIONS

森淳一「山影」

森淳一 山影(ceramic version)) 2018 撮影=宮島径 © MORI Junichi Courtesy Mizuma Art Gallery

 水や泡をモチーフとした流動的な木彫や骸の顔を持つ三位一体像、また近年では人形(ひとがた)作品も手がけてきた彫刻家の森淳一が、ミヅマアートギャラリーでは4年ぶりとなる個展を開催する。

 本展では久々の発表となる石彫に加え、木彫、油彩、陶と多様性に満ちた作品群で構成。本展のタイトルでもある作品《山影(さんえい)》は作家の故郷・長崎市の中心にそびえる金比羅山から着想したもので、標高366メートルの穏やかな低山は、かつて長崎の原爆投下時に多くの生死を分けた場所でもあった。

 森はそのなだらかな山の起伏から聖母子像「ピエタ」に似た神々しさを見出し、黒大理石を素材に金比羅山を制作。滑らかな黒い面の下に、壮絶な生と死、そして光と影を表現した。

 歴史の影に光を当てた本作は、作家の新たな代表作のひとつとなるだろう。