多田圭佑は1986年愛知県生まれ、2012年愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程修了。主な展覧会に「forge」(MAHO KUBOTA GALLERY、2017)、「AKZIDENZ(アクチデンツ)」(byスプラウトキュレーション、青山目黒、2016)、「EXISTENCE」(JIKKA、2015)などがある。
日々リアリティを増すテレビゲームに影響を受けて、鑑賞者に現実と虚構を行き来させるような作品を制作してきた多田。今回の個展では、同時並行で制作を進めている「残欠の絵画」と「trace / wood」の2シリーズの新作を発表する。
「残欠の絵画」は、果物や花、キリスト像など象徴的な静物などを主題としたシリーズ。絵画の表面はひび割れ、ところどころが剥落している。遠い昔に描かれ風化したようなその質感は、虚構の時間の気配をつくり上げている。
いっぽう、2015年から進化し続けている「trace / wood」は、一見すると、木材を張り合わせて作った支持体にガラスや金属を配置し、絵具がその間をつないでいるようなシリーズだ。しかし実際はアッサンブラージュではなく、すべてがモデリングペーストやアクリル絵の具など、絵画を成立させるメディウムのみで制作されている。
その技法とギミックにさらなる磨きがかかった新作。見る者の認識は裏切られ、作品を取り巻く時間や空間は鮮やかに変容することだろう。