日本における「美人」のイメージはどのようにつくられたか。明治から昭和の女性像と装いの変遷をたどることで、現代の「美人」の原点に迫る展覧会が箱根のポーラ美術館で開催される。
江戸時代に「美人のブロマイド」として流通した浮世絵では、 女性の顔は細い目とかぎ鼻、 おちょぼ口という類型的なパーツで描かれていた。しかしヨーロッパで油彩画を学んだ画家たちは、 西洋人のモデルを描くことを通して女性像の新たな表現方法を獲得。 明治の洋画家たちが新しい時代の「美人イメージ」をつくり上げていった。
ファッションや美意識に大きな変革が起こった明治から昭和初期に、 人々が憧れる理想的な「美人イメージ」誕生に大きな役割を果たしたのが、 生誕150年を迎える洋画家の岡田三郎助(1896〜1939)だ。 明治末頃から大正にかけ、 画家たちはデザイナーやクリエイティブディレクターの役割も担い、 百貨店や雑誌とともに、 最新の流行をつくり出した。 なかでも岡田は日本初の美人写真コンテストにも携わり、 女性の装いを繊細な感性でとらえ、 新たな美人像を次々と生み出していった。
そうした近代の女性の装いや美意識の変遷を、 岡田ほか藤島武二、 鏑木清方などの絵画や、 ポスター、 化粧道具など計約200点の作品でたどる本展。多様な女性像に触れ、いま一度「美人」のイメージの背景にある多様な「美」について考えたい。