2018.10.1

「映画なしの映画」とは? SHIMURAbrosがポーラ美術館で「見る」こと、作品を見る「私たち」の存在に問いを投げかける

現在、スタジオ・オラファー・エリアソンで研究員を務める姉弟ユニット・SHIMURAbros。ベルリンを拠点とするふたりが、ポーラ美術館の現代美術展示スペース「アトリウム ギャラリー」におけるHIRAKU Project第7回の展示として「Film Without Film 映画なしの映画」展を開催する。会期は12月8日〜2019年3月17日。

SHIMURAbros Silver Screen 2012 映像(20分・白黒)、鏡、プロジェクター、PC 「ニューアート展 NEXT 2012 動く絵、描かれる時間:Phantasmagoria」(横浜市民ギャラリー)での展示風景 ©SHIMURAbros
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 ベルリンを拠点に活動する、ユカ、ケンタロウからなる姉弟ユニットSHIMURAbros。映画作家からアーティストへの転身を果たした彼らは、映像を中心とする数々のインスタレーションを発表してきた。

 その作品は光や時間、そして物語といった「映画」を構成するテーマに基づき、鏡や光学ガラスといった様々な素材や、3DプリンターやX線CTスキャンなどの技術を用いて制作される。これらの最新のデジタル映像技術を駆使した作品は、いずれも「見る」ことを問い、現代の私たちの認識に揺さぶりをかける。

SHIMURAbros Film Without Film – Piano / Donky, Pistol / Man 2012 樹脂、塗料 22×22.0×26.0cm 「ニューアート展 NEXT 2012 動く絵、描かれる時間:Phantasmagoria」(横浜市民ギャラリー)での展示風景 ©SHIMURAbros

 本展のタイトルである「映画なしの映画」とは、1920年代ソビエトにおける実験映画の先駆者、レフ・クレショフが行った伝説的な実験映画の名称に由来。それを作品名とする《Film Without Film》は、映画の一篇をデータ化し、3Dプリンターによって出力した彫刻作品だ。また、《Silver Screen》では、スクリーンに映される光がスクリーンそばの鏡に反射し、作品を見る観客、さらに光を投影するプロジェクターをあらわにする。

 「見る」こと、そして作品を見る「私たち」の存在に問いを投げかけるSHIMURAbrosの映像と立体作品は、映像メディアとリアリティの関係性という本質的な問いを再考する機会をもたらすだろう。

 なおSHIMURAbrosは、銀座のポーラミュージアムアネックスでの個展「見ることは信じること」(10月5日〜11月4日)でも、映像と噴水を中心にした新作インスタレーションを発表。両会場で作品を体験したい。