原田裕規は、1989年山口県生まれの美術家。2013年に武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科を卒業、その後16年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻を修了した。
おもな個展歴に「心霊写真/マツド」(山下ビル、愛知、2018)、 「心霊写真/ニュージャージー」(Kanzan Gallery、東京、2018) 。また、キュレーション活動も積極的に行っている原田は、「心霊写真展」(22:00 画廊、東京、2012) 、「ラッセン展」(CASHI、東京、2012) などの展覧会の企画も務めてきた。おもな著書に『ラッセンとは何だったのか?──消費とアートを越えた「先」』 (フィルムアート社、2013)がある。
原田が手がける数々のプロジェクトは、社会のなかで広く認知されているモチーフを取り上げ、議論喚起型の問題を提起するもの。あらかじめ批評性を持つモチーフを選ぶことに加え、絵画、写真、インスタレーション、キュレーション、テキスト、書籍など多種多様なメディアを連鎖/反復させることによって、プロジェクトを内省的に拡張させる手法を用いている。批評の蓄積を変幻自在に操るようなその活動は、つねに注目を集めてきた。
現在、東京・恵比寿のCAGE GALLERYで開催されている「掲示/啓示」展は、昨年に同ギャラリーで開催された企画展シリーズ「作者不詳 #1」の第2弾。本展は、2つの窓枠のみで構成される同ギャラリーに「作者不詳」の写真が2枚並べられている。展覧会タイトルにもなっている「掲示」「啓示」の併置は、本展の構成とあわせて、「作者」の存在の確かさと不確かさにフォーカスするものだ。
また、同ギャラリー向かいの Hender Scheme「スキマ」には、 原田の近年の活動をはじめ、作品の制作背景や「作者不詳」というテーマで展開されたインタビューが収録されたハンドアウトが置かれている。本展とあわせてチェックしたい。