「自己表現に終始する回路を断て」。
時代を超え、写真家を挑発しつづける
同人誌『地平』の復刊記念展が開幕

時代を超え、いまを生きる写真家たちに影響を与えてきた写真同人誌『地平』。今回、1977年9月の休刊から、41年の時を経て、復刊が決定した。それにともなって東京・渋谷のCASE TOKYOで「地平」展が開催されている。会期は8月4日まで。

地平より

 『地平』は1972年4月に創刊以降、第10号まで5年間にわたり刊行された写真同人誌。当時、大阪写真専門学校(現・ビジュアルアーツ専門学校、大阪)の教員を務めていた写真家・百々俊二を中心に、博多を拠点に写真家活動をしていた20代前半の学生、教員仲間とともに制作された。

『地平』1号・2号・10号 表紙

 70年代の日本は、激動の社会情勢を背景に写真表現も大きく揺れ動いた時代であり、メンバーの一人である黒沼康一は『地平』が発信するものを次のような言葉で表している。

 「カメラはぼくらの武器だ。自己表現に終始する回路を断て。写真は閉塞した感性を脅す凶器のようなものです。見たいのはきみの写真でなく、きみの写真が開示する世界なのです」。

 いまは亡き黒沼が残したそのメッセージは時代を超え、今日も多くの写真家たちを共感させ、挑発している。そして今回、77年9月の休刊から、41年の時を経て、『地平』の復刊が決定。それにともなって、東京・渋谷のCASE TOKYOで「地平」展が開催されている。

地平より

 メンバーは百々のほか、阿部淳、野口靖子、山田省吾、松岡小智、赤鹿麻耶、浦芝眞史など、各世代から7名の写真家が集結。「大阪」を制作の鍵として2ヶ月間の撮影を決行したという。会場には、写真集に未収録の作品も展示される。

 本展は、誰でも自由に発信できる時代にあえて写真集を制作し、その過程を通して写真集の意義を再考するというもの。各世代、各写真家の写真表現のアプローチが「地平」として何を生み出すか、期待したい。

地平より

編集部

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