EXHIBITIONS

棚田康司「全裸と布」

棚田康司 h143の女性像(部分) 2018 撮影=宮島径 © TANADA Koji Courtesy of Mizuma Art Gallery

棚田康司 h143の女性像 2018 撮影=宮島径 © TANADA Koji Courtesy of Mizuma Art Gallery

 一貫して少年少女の像を彫り続け、成熟と未熟、聖性と俗性、上昇と下降などを提示してきた棚田康司。2017年に開催されたO JUNとの2人展「鬩(せめぐ)」(伊丹市立美術館)では、彫刻家、画家とそれぞれが異なるアプローチで、表現という大きな課題に立ち向かった。棚田は、同一のモデルを題材にした作品制作、空間を共有した公開制作など、展覧会名が示す通りの一騎打ちを振り返り、自分自身と向き合う機会になったという。

 この展覧会から1年を経て開催される本展では、これまでの棚田作品から離れた裸婦像の新作を発表。重力に抗うようにわずかに上を向いた顎先や、未知に構えるように力が入った足の指先といった細部に張り巡らされた緊張感と、表情から感じ取れる母性のような慈しみや温もりが均衡を保ちながら立ち現れる。木との対話を丁寧に重ねながら彫り、自分とは何か、表現とは、彫刻とは何かを問い続ける、棚田のさらなる深化を見ることができるだろう。