土肥美穂は1974年奈良県生まれの彫刻家。2000年に東京造形大学彫刻科を卒業、02年に同大学の大学院研究課程を修了した。
「OPEN STUDIO」展(神奈川県、相模原市民ギャラリー、2003)をはじめ、これまで数々のグループ展を開催してきたほか、中之条ビエンナーレ(2007)といった芸術祭にも参加。近年は、シカゴやメキシコシティーの展覧会にも出品するなど、発表の場を海外にも広げている。
土肥の作品は、木、真鍮、銅板、糸、布、紙など、様々な素材が組み合わされた独特の造形を持つ。土肥は異なる素材を接合し、ときに彩色を加えることで、人間の視覚がとらえる質感にズレを生じさせることを意図している。
素材とかたちの調和と反発を巧みにコントロールすることで生み出される造形の躍動感と、布や銅板を合わせ、繊細さと硬質さを共存させることによって表現される違和感は、どこか生命力を想起させ、見る者を魅了する。
今回の個展では、造形だけでなく、内側の存在に意識を向けた新作も発表されるという。内包されるものは不可視であり、外側からは断片的にしか見えないが、それゆえに鑑賞者の想像を広げ、豊かな感情をもたらすのだろう。