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2018.2.8

アジアトップクラスのギャラリーが集結。アート・バーゼル香港2018の見どころとは?

アジアでもっとも大規模なアートフェアとして知られる「アート・バーゼル香港」が今年6回目の開催を迎える。32ヶ国から248ものギャラリーが参加する今回。その見どころと、アート・バーゼル香港を取り巻くマーケットについてディレクターのアデリン・ウーイに聞いた。

アート・バーゼル香港2017の様子 © Art Basel
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 香港コンベンション&エキシビションセンターを会場に、3日間(一般会期)にわたって開催される「アート・バーゼル香港」。同フェアは、アジア最大規模のアートフェアとして2013年のスタート以降、年々その存在感を確かなものにしている。

 6回目の開催となる今回は、32ヶ国から28の初出展を含む248ギャラリーが参加。フェアのコアとなる「ギャラリー部門」では国際展開するガゴシアンやペース、ハウザー&ワースなど巨大ギャラリーを世界の主要なギャラリーがそれぞれ絵画、彫刻、インスタレーションなど多様な作品を出品する。

アート・バーゼル香港2017の様子 © Art Basel

 またハイライトとして、日本からは作家を個展あるいは2人展で紹介する「インサイト部門」にMAHO KUBOTA GALLERYが初参加。長島有里枝の家族をテーマにしたプリントを展示するほか、MISA SHIN GALLEYは建築家・磯崎新のドローイングを見せる。いっぽう、新進作家の個展からなる「ディスカバリー部門」では、uranoが梅津庸一の絵画作品を展示するという。

長島有里枝 Self Portrait (family) 1993 Courtesy of the artist and the gallery

 このほか、特別にキュレーションされた30のプロジェクトを展開する「キャビネット部門」では、小山登美夫ギャラリーから菅木志雄が90年代に制作したエンベロープドローイングシリーズを日本国外で初公開するほか、サイトスペシフィックな大型インスタレーションからなる「エンカウンターズ部門」では、埼玉県立近代美術館での個展が記憶に新しい遠藤利克が、11メートルにおよぶ船型の作品《Void-Wooden Boat, Hong Kong》をSCAI THE BATHHOUSEから発表。大巻伸嗣はMind Set Art Centerから、目に見えない力に焦点を当てた新作《The Luminal Air Space-Time》を公開する。

遠藤利克 Boat Courtesy of the artist and the gallery

 日本からも注目の作家が集まる今回のアート・バーゼル香港。来日したディレクターのアデリン・ウーイはアート・バーゼル香港の現在とそれを取り巻く状況についてどのような思いを抱いているのか。本人に聞いた。

アデリン・ウーイ © Art Basel

――アート・バーゼル香港は間違いなくアジア最大規模のアートフェアだと思いますが、いっぽうで上海の「ART021」のようなフェアも勢いを増しつつあります。開催時期は違うものの、このようなフェアを競合相手だと感じますか?

 まず我々はそういったフェアを競合とは考えていません。むしろ多くのフェアが生まれることで、皆さんは1年を通してアートに触れることができます。ヨーロッパではつねにアートイベントが行われていますよね。アジアもそういった状況になっていきているのは喜ばしいことだと思います。

 アートフェアだけでなく、国際展にしてもアジア太平洋地域では光州や上海、シドニー、コチなどでビエンナーレが開催されます。そういった意味でも、アートフェアやイベントの数が増えることは良い相乗効果を生みだすのではないでしょうか。

香港の様子 © Art Basel

――実際にアート・バーゼル香港に来場者の地域別の動向など特徴があれば教えてください。

 来場者については注意深く分析していますが、来場者数は安定しています。ご承知の通り、アート・バーゼル香港はアジアからの来訪が多いのですが、とくにオーストラリアは一番近い国際的なアートハブが香港なんですね。ですからオーストラリアからは個人コレクターだけでなく、美術館のキュレーターなどアートに携わるすべてのジャンルの方々が来場します。

 日本やシンガポール、インドネシア、韓国などはもちろん安定しているのですが、最近顕著なのは欧米からの来場者の増加です。

 以前からテートやサーペンタインギャラリーのキュレーターなどは来場していましたが、近年はニューヨーク近代美術館やサンフランシスコ近代美術館やニューミュージアム(ニューヨーク)、ロサンゼルス・カウンティ美術館などかなり広域から来るようになった。数が断然増えています。そういった人たちは香港だけでなく、近隣の上海や日本などのアート施設に足を運ぶことも多いんです。

アート・バーゼル香港2017の開催時の様子 © Art Basel
Jessica Hromas for Art Basel

――コレクターについてうかがいいます。日本では若手起業家のコレクターが少しずつ増えてきていますが、中国あるいは香港ではどうでしょうか?

 中国南部は香港に近いのでボリュームゾーンではありますが、これは中国に限らず世界共通のことだと思います。シリコンバレーに代表されるように、テック系の企業は業績を伸ばしているところが多いので、そういった企業の若いトップが購買層になってきていますね。

――アートマーケットでも(相対的に数字はまだ小さいですが)オンラインでの作品購入やオークションなど、取引全体がが伸びつつありますね。そのような中で、オフラインであるアートフェアを開催する意義はどこにあると考えていますか?

 オンライン取引を快適だと感じる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。先日、とあるギャラリーと話をしていたのですが、たしかに中国のコレクターの中にはギャラリーから送られてくる作品情報のPDFだけを見て購入する人たちもいます。でも多くのコレクターは違うと思います。実際にギャラリーに来て、作品を見て、ギャラリストと話をしてから購入を決める。作品購入は信用で成り立っている部分もありますから。

 もちろん、ケースバイケースで地域によっても違うと思いますが、50万ドルの作品をワンクリックで買いますか? つまりそういうことです。