YAUが掘り起こす街の創造力。「アートアーバニズム」の未来を見据えて【7/8ページ】

エリアのリサーチをかたちにした田中功起と小林エリカ

 オープンスタジオに参加したアーティストの田中功起は、「誰かの経験を共有することはできるのだろうか」というステイトメントから「経験の共有」プロジェクトをスタート。2023年10月から2024年2月にかけ、大丸有エリアのワーカーにインタビューを行い、プロジェクトを映像作品に帰着させることを目指した。インタビューをもとに田中は初めてシナリオを書き、『大丸有標本室』の監修でもある俳優の松井周と鄭亜美を迎え、国際ビルで撮影した映像作品『演じることは個人的なことをシェアすること』を発表した。

田中功起の展示風景

 いっぽうの小説家でアーティストの小林エリカは、目に見えないものや記憶、史実に基づくリサーチを重ねて制作を行ってきた表現者だ。近年は、大丸有周辺エリアにおける太平洋戦争時の「風船爆弾」にまつわる出来事や人をリサーチし、『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋)と題する小説を書き上げた。その小説内容と連動するかのように、三菱地所が保管していた旧八重洲ビルヂングのレリーフやモザイクガラス等を、自身のヴィジュアル作品と組み合わせて展示することで、失われかけた記憶と史実をかたちにして伝えた。

小林エリカの展示風景
小林エリカの展示風景

編集部