周辺エリア活性化への影響
ターナー・コンテンポラリーの南側に広がる旧市街周辺には、カフェやレストラン、ヴィンテージショップ、ギャラリーなどが立ち並び、大きな活気に満ちている。その風景は、1990年代半ば以降にクリエーターたちが集まり、刺激的な街へと変貌を遂げたイーストロンドンを思わせる。
この旧市街は、2000年代初頭には店舗の3分の2が空き店舗だったという。しかし、文化遺産宝くじ基金(Heritage Lottery Fund)による120万ポンドの助成などを受け、現在では歴史を感じさせる建物や細い路地に個性的な店が並ぶ、魅力あるエリアへと生まれ変わった。2017年3月のローカル・ガバメント・アソシエーションのレポート(*2)によれば、2008年から17年までのあいだに、地域全体で芸術、文化、クリエーティブ産業に従事する企業数は32パーセント増加し、アーティスト・スタジオの数も71パーセントも増えたという。こうしたアートに関わる動きが目立っていることからも、ターナー・コンテンポラリーが地域に与えた影響の大きさは明らかだろう。

トレイシー・エミンによる貢献
この地が「アートの町」として存在感を強めるうえで、もうひとつ重要な出来事となったのが、2021年にトレイシー・エミンがイーストロンドンから故郷であるマーゲートに拠点を移し、展示スペースとアーティストのスタジオ「TKEスタジオ」を備えた複合施設を運営するトレーシー・エミン・ファンデーションを立ち上げたことだ。TKEスタジオには、無料で参加できるアートスクール「TEAR」も併設されており、学位の取得を目的とするものではないが、実践的な学びの場として機能している。今年1月には、エミンに招かれてこの地を訪れたマドンナが、「マーゲートは天国であり、創造性に満ちている」とインスタグラム(*3)に投稿し、大きな注目を集めた。


華やかな変貌を遂げたマーゲートだが、そのいっぽうで、いまなおイギリスでもとりわけ貧困率の高い地域を抱えており、再開発や活性化に伴う物価や地価の上昇により格差の拡大も指摘されている。そうしたなかで、ターナー・コンテンポラリーは、すべての人に開かれた美術館として、多様な層の関心を引き寄せるイベントや教育プログラムの充実に力を注いでいる。また、エミンのTKEスタジオ内にあるカフェ「パーフェクト・プレイス・トゥ・グロウ」では、安定した雇用に就いていない地元の18歳から24歳までの若者にトレーニングの機会を提供している。アートを通じて人と人、そして地域をつなぐ取り組みは、いまこの町で確かに続いている。
*1──https://www.christies.com/en/stories/margate-art-city-guide-e1deb1629f1b4e2cb5d028d88a1c5d53
*2──https://www.local.gov.uk/case-studies/role-heritage-regeneration-margate
*3──https://www.instagram.com/p/DUEE2BAAotc/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA%3D%3D



















