人々をつなぐ美術館として
この美術館の大きな特徴として挙げられるのは、地域住民をはじめとする多様な人々をアートを通じて結びつけるための独創的な取り組みを数多く行っている点だろう。
昨年末に始まった新たな試みである「ドローイング・スタジオ」は、その名の通り誰もが気軽にドローイングを楽しめる空間だ。アーティストの指導によるワークショップから、子供向けの「放課後絵画クラブ」まで、曜日や時間ごとにテーマが設けられ、幅広い層が利用しやすいよう工夫されている。すでにマーゲートのクリエーティブ・コミュニティの拠点となっており、開設からわずか2週間で3000人以上を集めたという。

また、チャリティ団体や地元企業とのコラボレーションもユニークだ。幼い子供を持つあらゆる層の家庭が参加できる月例のアートアクティビティ「ターニップス(Turnips)」は、地元の幼児教育コミュニティとチャリティ団体「セーブ・ザ・チルドレン」の支援のもとで実施されている。「ルッククラブ(Look Club)」は、大人を対象に、美術館の展示から得たインスピレーションやアイデア、疑問などを、リラックスした雰囲気のなかで自由に語り合う集まりだ。2020年に高齢者支援のチャリティ団体「エイジUK」の地域支部との協働で始まり、現在はケント州で不治の病の患者とその家族を支える「ピルグリムス・ホスピス」と連携しながら、社会的孤立の解消と地域福祉の向上を目指している。
鉄道会社サウスイースタンとの提携による「コースタル・コミューターズ(Coastal Commuters)」は、小学5年生と6年生を対象とした教育プログラムだ。まず鉄道旅行について学ぶことからスタートし、その後、周辺の歴史や文化に触れながら海岸線を歩いて美術館へ向かう。最後には、美術館で展覧会を鑑賞し、ワークショップにも参加するという内容となっている。
ターナー・コンテンポラリーは入場無料であり、ほとんどのワークショップやイベントも無料、もしくは手頃な料金で参加できる。そうした開かれた姿勢もまた、誰もが気軽に足を運べる理由のひとつとなっている。
運営資金は、公的な機関ではケント州議会とアーツ・カウンシル・イングランドから得ている。アーツ・カウンシル・イングランドは、イングランド各地の芸術文化機関を支援する公的団体だ。ドローイング・スタジオは中国のデ・イン財団の支援を受けており、そのほかにも、資金提供企業としてバーバリーをはじめ、近隣に拠点を置く建築事務所などが名を連ねる。さらに、多くの個人のサポーターの存在も同館を支えている。



















