いまなお続く作品返還の要求
芸術祭の辞退を決めたあとも、郁川氏は作品の返還をめぐり奥廣氏とトラブルになる。郁川氏の作品は8月1日に自身で撤去し、返送作業を行ったため無事だったが、作家グループの取りまとめ役的な立場にあった郁川氏は、返還されていない他作家の作品をめぐって奥廣氏とトラブルになった。「作品は東京から奥廣氏がトラックに積んで現地に運んだので、そのトラックで作品を東京に戻してほしいと要求しましたが、そこで氏は返送のための料金を負担してほしいと主張し始めました。作品が屋外に放置されたままの状態になってしまうので、なんとか積み込んでほしいとお願いしたのですが、氏は返事をせずにその場に横になり、返事をしないといった状況になってしまい、居合わせた1人の判断で警察を呼ぶことになりました。警察の立ち会いのもと、LINEのグループをつくり、そこでやり取りをすることで互いの主張を交換するという方針が示されましたが、奥廣氏からの返信は最初の1通のみで途絶えてしまいました」。その後、郁川氏ら辞退を申し出たアーティストは、内容証明郵便を奥廣氏に送付したうえで、氏の保管していた場所の鍵を親族に開けてもらい作品を奪還した。
だが、いまも所在が不明なアーティストの作品もあるという。郁川氏は次のように話す。「本芸術祭は24年10月から12月にかけて『プレ展示』を行うということになっていましたが、じつは私たち本祭のグループの前に、この『プレ展示』のために集められたアーティストたちがいたんです。そのグループは結果的に離散状態になっており、当然作品返還もされていない。私たちは現地に置かれていたものを会期に間に合わせようと何とか展示したのですが、そのなかにプレ展示を予定していた方の作品も含まれていたようです。こうした作品は、すでに1年近く展示もされないままに放置されていたことになります。このグループの方たちのなかには、作品返還の要求を行っている人もいますし、まだ声を上げられていない方もいるはずです」。




















