会場準備の遅延、そして辞退へ
実際に展示準備を始めた郁川氏だが、設営の遅延が徐々に明らかになり始めたという。「奥廣氏は準備が進んでいると主張するのですが、実際には進んでいないということが多発し、古民家の2階で展示を行うことは決まっていたものの、電源の整備がいつまで経っても行われず、そのためプロジェクターの位置決めなど現実的なプランニングが大幅に遅れることとなりました」。
設備面のみならず、ウェブサイトの更新、キャプションの印刷、会場連絡、運営フローの共有といったソフト面でも、不備が目立ったという。「まず、ウェブサイトの会場マップが完成していないので、どこで何の作品が展示されているのか、まったくわからないわけです。また、作品の電源のオンオフを含めた会場のオープンとクローズを行わなければいけませんが、スタッフのシフトどころか存在も確認できていないので、とても作品を任せる気にはなりませんでした。また、ウェブサイトの参加作家のなかには、辞退しているにも関わらず掲載され続けていた方もいますので、いったい誰が参加しているのかさえ、確実な情報がなかったんです」。

結果的に郁川氏は、芸術祭への出品の辞退を8月1日に決めた。「7月30日から4日間の予定で作品をインストールする計画でしたが、現地に行ってみればキャプションもできていない状態だったので、キャプションの印刷やウェブサイトへの展示場所の記載などを奥廣氏にお願いしたのですが、結局行われませんでした。また、展示会場には作品が床置きされていたので、居合わせたアーティスト4人で壁に設置する作業などを深夜までやっていたのですが、その後に奥廣氏が何もせず横になっている状態を見て、氏が業務を放棄していると判断して辞退を決めました」。その後、郁川氏はグループチャットに宛てて、辞退理由をPDFにしたものを投げたが、その数時間後にはオープンチャット自体が削除されてしまった。なお、郁川氏が聞いた奥廣氏の認識では「芸術祭の準備もまた芸術祭」であり、芸術祭は現在も開催されていることになっているという。

その後も現地に滞在していた郁川氏は、アーティストら有志とともに、東かがわ市地域創生課に本芸術祭についての状況の確認をするため市役所を訪れる。このときに初めて、実際には後援団体ではなかったという虚偽記載の事実を確認することになった。

後援欄の記載に関しては、8月19日に東かがわ市ならびに同市教育委員会が連名で次のコメントを出し、2025年度の後援を行っていないことを対外的に発表している。
このたび、東かがわ市を会場に当該イベントを企画した団体に活動の実態がないことが判明しました。
当該団体のHP内の後援欄に「東かがわ市教育委員会」とありますが、これは香川県等が主催する「かがわ文化芸術祭 2024」の連携枠として県内各機関が包括的に後援されており、2025年度においては当該団体に対する本市教育委員会の後援は行っておりません。
また、現在東かがわ市引田エリアで開催されている「瀬戸内国際芸術祭 2025」と混同される可能性があることから、当該イベントの名称を変更するように要望しておりましたが、名称変更はもちろんのこと、当該団体からの連絡はありません。
もちろん「瀬戸内国際芸術祭 2025」と当該イベントは一切関係ありませんし、本市も一切関係が無いことを申し添えます。
また翌20日、市は奥廣氏とコンタクトをとり、芸術祭ウェブサイトの後援覧からの東かがわ市教育委員会の名前の削除を要求。ウェブサイトから、連携・後援の項目に記載されていた団体名や企業名が削除された。なお、ここでは虚偽記載の理由は2024年度版のまま未更新であったとされている。




















