『プラハ、二〇世紀の首都あるシュルレアリスム的な歴史』
20世紀のプラハ、芸術家や知識人の夢と不条理が交錯した都市。芸術の都パリのように中心地として栄えたわけではなかったが、そこには確かに革命的にして詩的なモダニティが息づいていた。チェコ・シュルレアリスムの活動を中心に、フランツ・カフカ、カレル・チャペックといった著名作家から知られざる芸術家まで、プラハを彩った文化人たちの遺産を精査した大著。メイン・ストリームとは異なる視点から、都市におけるモダニズムの経験が編み直される。(中島)
『プラハ、二〇世紀の首都あるシュルレアリスム的な歴史』
デレク・セイヤー=著
白水社|13500円+税
『社会主義リアリズム』
フランス人ロシア文学者の重鎮による「社会主義リアリズム」の包括的研究。日本では安部公房らの戦後文学に広く受容されたいっぽう、海外ではゲルハルト・リヒターが旧東ドイツで伝統的技法を身につけ、クレア・ビショップが『人工地獄』で参照するように、その影響は現代にまで及んでいる。前史とも言えるロシア・アヴァンギャルドから1991年の共産主義体制崩壊まで、20世紀のソビエト連邦の芸術を支配した公認教義の盛衰を、当時の理論・実践の分析を通して克明に描き出す。(近藤)
『社会主義リアリズム』
ミシェル・オクチュリエ=著
白水社|1200円+税
『日本写真史 1945-2017 ヨーロッパからみた「日本の写真」の多様性』
世界のアートワールドが熱い視線を注ぐ日本の戦後写真。本書は、1945〜2017年を年代順に「映像派」「ガーリーフォト」「現代日本の写真」など5つの章に分け、代表的写真家25名の作品およびインタビューを紹介する。終戦日の太陽を撮った濱谷浩、日米安保闘争のなか活動したVIVO、高度経済成長期に民俗文化へ目を向けた須田一政らを通して、戦後写真が政治・社会の映し鏡であったことを改めて確認するとともに、その遺伝子が時代を超えて受け継がれてきたことを実感できる1冊。(近藤)
『日本写真史 1945-2017 ヨーロッパからみた「日本の写真」の多様性』
レーナ・フリッチュ=著 飯沢耕太郎=監修
青幻舎|5500円+税
(『美術手帖』2019年2月号「BOOK」より)