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デュシャンから気鋭の若手論者まで。2月号新着ブックリスト(1)

雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。デュシャンを知る2冊や、気鋭の若手論者・上妻世海の初著書など、『美術手帖』2月号に掲載された注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=近藤亮介(美術家)+中島水緒(美術批評)

『BEPPU PROJECT 2005-2018』

2005年、別府市で設立されたNPO法人「BEPPU PROJECT」。以来、今日まで「混浴温泉世界」や「in BEPPU」などの国際芸術祭を中心に、1000を超えるプロジェクトを企画・運営してきた(最近ではアニッシュ・カプーアの個展も新しい。同団体の代表理事を務める著者が、これまでの活動を振り返りながら、地域とアートの関係性について語る。国内外の芸術文化事業を視察し、大分や別府の現況を見抜き、課題解決のためにアクションを起こす、その行動力に感服する。(近藤)

『BEPPU PROJECT 2005-2018』
山出淳也=著
NPO法人 BEPPU PROJECT|1500 円+税

 

『制作へ─上妻世海初期論考集』

いまもっとも注目される若手論者のひとり、上妻世海が2016年以降に発表した文章を集めた初著書。宮川淳のイマージュ論、ウィラースレフの『ソウル・ハンターズ』、中村雄二郎の共通感覚論、マルセル・デュシャンを経由しながら新たな制作概念の確立に向かう表題論文をはじめ、作品における「魅惑の形式」に迫った田中功起論、原田裕規によるインタビューなど13篇を収録。人類学的思考をベースにしながら近代的システム、共同体、主体のありようを問い直す刺激的な論考集。(中島)

『制作へ─上妻世海初期論考集』
上妻世海=著
オーバーキャストエクリ編集部|3200円+税

 

(1)『マルセル・デュシャンとは何か』 (2)『マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ アート、アーティスト、そして人生について』

没後50年の節目に再考の機会を提供するデュシャン本2冊が刊行。日本におけるデュシャン研究の第一人者による(1)は、入門書の体裁でまとめられながら初学者以外も引き込む詳細なモノグラフ。最新の研究成果を踏まえた作品解説が新たな知見をもたらす。(2)は著名ジャーナリストが1964年に行ったインタビューの全訳。ユーモアを交えて自己開示する意外な作家の素顔を、語り口にも工夫を凝らして翻訳した。併せて読めば謎めいた作品群の理解の一助となる。(中島)

(1)『マルセル・デュシャンとは何か』
平芳幸浩=著
河出書房新社|2500円+税

(2)『マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ アート、アーティスト、そして人生について』
マルセル・デュシャン+カルヴィン・トムキンズ=著
河出書房新社|2100円+税

『美術手帖』2019年2月号「BOOK」より)

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