EXHIBITIONS

磯谷博史 回復

2026.03.12 - 05.17

磯谷博史 パンゲアの破片 06 2025 ピグメントプリント

 カスヤの森現代美術館で、磯谷博史による個展「回復」が開催されている。

 磯谷博史は1978年東京都生まれ。東京藝術大学建築科を卒業後、同大学大学院先端芸術表現科およびロンドン大学ゴールドスミスカレッジで美術を学ぶ。写真や彫刻の制作を通して、現実の認識や、物質と時間の関係性を探求してきた磯谷。空間、作品、観者の関係を振付と捉え、認識を揺さぶり、想像力に現実の思索を委ねる展示体験を編んできた。 

 本展では、2つの主要なシリーズを展示している。写真作品「パンゲアの破片」は、第二次世界大戦末期に破壊されたオーストリア・ロースドルフ城の陶磁器片を、ミルクに浮かべ撮影したもの。ミルクは再生を象徴する小さな儀式の場として機能し、破壊の鋭い輪郭を包み込み、かつて器であった姿を観者の想像のうちに呼び戻す。

 いっぽう陶芸作品「活性」は、磯谷が購入し集めた約5000年前の土器片を用い、釉薬を纏わない素焼きで焼き締められた作品だ。原始の人々が野焼きで焼成、使用し、壊れていった断片を、いったん泥へと戻し、粘土と混ぜ合わせ、現代において二度目の焼成を施したものとなる。磯谷は過去を引用するのではなく、時間を跨いだ共作として、過去の創造性を現在へ置き直すということを試みている。

 断片に潜む記憶や創造性を現在のうちに呼び起こし、新たな思考へと接続していく2つのシリーズ。今回の展示は、「なおすこと」を「つくる」へとつなぐ回路を提示するものとなっている。