加賀蒔絵と京蒔絵

　清水三年坂美術館で、企画展「加賀蒔絵と京蒔絵」が開催されている。

　蒔絵は、漆で文様を描き、その上に金粉や銀粉などを蒔いて装飾する技法のこと。その繊細高雅な趣は、寺院の荘厳や調度品・装身具などの装飾に好まれ、各時代の美意識を反映しながら発展してきた。

　明治維新による社会の変革により一時衰退の危機を迎えるも、輸出向け製品において活気を取り戻し、一層多彩な作品がつくられる。同館では、そのように蒔絵が爛熟した時代の幕末から明治期の細密華麗な作品を多数所蔵。なかでも古い伝統を持つ京蒔絵とその源流を同じくし、独自に発展してきた加賀蒔絵は、品格ある精彩を放つ。

　本展では、京蒔絵と加賀蒔絵を継承し、魅力ある蒔絵制作に取り組んだ名工らの作品を展観。精巧な作風で知られる加賀蒔絵の沢田宗沢斎、京蒔絵の本流・富田幸七、そして質の高い蒔絵の改良研究に尽力した漆器商・象彦など、伝統的技法を確かに継承し、時代に沿う意匠を模索し続けた名工らの作品に触れてみてほしい。