EXHIBITIONS
山上新平「KANON」
POETIC SCAPEで、山上新平による個展「KANON」が開催されている。
本作は同じくPOETIC SCAPEで開催した「The Disintegration Loops」(2019)と「liminal(eyes)」(2023)の2つのシリーズのあいだに撮影されたもの。初期のモノクロ作品3部作(「EQUAL」「SOW」「SPECTRUM」)とカラー作品「The Disintegration Loops」の制作において、足元にある山の木々など「命ある静物」と向きあい、少しずつ眼差しを変えながら写真を撮り続けてきた山上は、あるときその眼差しが臨界点を迎えたような感覚になったという。そこで、眼差しを新しいフェーズに持ち込むために「動的を見つめる」ことを次なる主題に掲げた。そうして選んだ被写体が蝶であった。
しかし、不規則な動きをする蝶を追いかける撮影は困難を極めた。精神的、肉体的に消耗するなかで山上は、これまでの自身の写真を分析し、これまでの静的な被写体を凝視する眼差しを壊しつつ、試行錯誤を繰り返した。その苦闘の末に「見る質として、捕まえようと凝視する眼差しから捕まえない触れるだけの眼差し」というフェーズが生まれたという。こうして獲得した眼差しが、次作「liminal (eyes)」へとつながる。
山上は「触れるだけ」の眼差しを獲得する過程で、写真家が被写体を主体的に見ようとすることを放棄し、いかに見るかはいかに見ないかという客体に徹することを選択した。そして相手をあるがままを受け入れていくことで見えてくる世界もあると考えるようになる。
「触れるだけ」の眼差しと、あるがままを受け入れる姿勢によって生まれた「KANON」は、ステレオタイプな像から解放された蝶の「動的な命」の美しさをとらえる。
本作は同じくPOETIC SCAPEで開催した「The Disintegration Loops」(2019)と「liminal(eyes)」(2023)の2つのシリーズのあいだに撮影されたもの。初期のモノクロ作品3部作(「EQUAL」「SOW」「SPECTRUM」)とカラー作品「The Disintegration Loops」の制作において、足元にある山の木々など「命ある静物」と向きあい、少しずつ眼差しを変えながら写真を撮り続けてきた山上は、あるときその眼差しが臨界点を迎えたような感覚になったという。そこで、眼差しを新しいフェーズに持ち込むために「動的を見つめる」ことを次なる主題に掲げた。そうして選んだ被写体が蝶であった。
しかし、不規則な動きをする蝶を追いかける撮影は困難を極めた。精神的、肉体的に消耗するなかで山上は、これまでの自身の写真を分析し、これまでの静的な被写体を凝視する眼差しを壊しつつ、試行錯誤を繰り返した。その苦闘の末に「見る質として、捕まえようと凝視する眼差しから捕まえない触れるだけの眼差し」というフェーズが生まれたという。こうして獲得した眼差しが、次作「liminal (eyes)」へとつながる。
山上は「触れるだけ」の眼差しを獲得する過程で、写真家が被写体を主体的に見ようとすることを放棄し、いかに見るかはいかに見ないかという客体に徹することを選択した。そして相手をあるがままを受け入れていくことで見えてくる世界もあると考えるようになる。
「触れるだけ」の眼差しと、あるがままを受け入れる姿勢によって生まれた「KANON」は、ステレオタイプな像から解放された蝶の「動的な命」の美しさをとらえる。