EXHIBITIONS

コレクション展2023ー夏秋 特集:本のためにー大家利夫の仕事

大家利夫 気谷誠著 『メリヨンの小さな橋』特装本(柄澤齊 巻頭画) 1986 和歌山県立近代美術館蔵

 和歌山県立近代美術館で 「コレクション展2023ー夏秋 特集:本のためにー大家利夫の仕事」が開催されている。

 大家利夫は1949年東京都生まれ。18歳のとき、オペラ歌手・藤原義江を訪ねて同氏の著作 『きりすとの涙』の個人出版を実現させたのが本づくりの始まりであった。その後、1970年に渡仏し、フランス国立エスティエンヌ印刷工芸高等学院で、箔押と手工製本(ルリュール)、工業製本全般を学ぶ。帰国後、大家利夫美術装丁工房を設立。1984年にはあらたに指月社(しげつしゃ)を設立し、内容、材料、印刷、製本、頒布のすべてに心血を注ぐ、世界でもほかに類をみない個人出版社となった。その完成度を極めた仕事は高く評価され、2012年にはロサンゼルス・カウンティ美術館で個展が開催されている。日本の工芸への造詣を深め、あたかも茶碗を手にした時のようなふっくらとした手触りも、大家作品の特色といえる。

 また今年2月から4月にかけて開催した 「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家」展において、1950年代から60年代にかけての彼らの作品を紹介したのに続き、池田満寿夫の1960年代から80年代の作品を、広島市現代美術館の協力により特集する。