麻生三郎展　三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン

　世田谷美術館で、麻生の生誕110年を記念した展覧会「麻生三郎展三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン」が開催される。

　麻生（1913〜2000）は東京生まれ。太平洋美術学校で学び、1938年渡仏するが大戦下の緊迫した情勢により帰国。豊島区長崎のアトリエ村に住み、美術文化協会の創立に参加。戦時下では松本竣介らとともに、自由な表現をもとめて8人の画家による新人画会を結成し、戦後は自由美術家協会と合流。48年、世田谷区三軒茶屋にアトリエを構え、武蔵野美術大学で後進の育成にも尽力し、64年以降は無所属として活動を続けた。麻生は一貫して現実と対峙しつつ自らの内面を深く見つめ、そこから浮かび上がる人間のいる風景を描いたことで知られている。

　本展では、麻生が世田谷に住んだ25年間で手がけた油彩と素描を合わせた約110点をはじめ、野間宏、椎名勝三など文学者たちとの交流を示す絵や装丁の仕事など、時代と対峙した創作の軌跡をたどる。また、この時期に麻生が強く惹かれ、自ら作品を蒐集した社会派の画家ベン・シャーン（1898〜1969）の集大成といわれる版画集『ー行の詩のためには...：リルケ「マルテの手記」より』全24点を含む麻生旧蔵の作品群も展覧される。