2018.10.30

早世の画家・松本竣介の思索をたどる。当時のアトリエを再現した展示空間で得る深い鑑賞体験とは

36歳という若さで早世した画家・松本竣介の展覧会が、群馬県桐生市の大川美術館で開幕した。本展では、松本の「思索の場」としてのアトリエを再見することを試みている。会期は12月2日まで。

松本竣介 街 1938 大川美術館蔵
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 36歳という若さで世を去った画家・松本竣介(1912~48)。中学時代に聴力を失い、やがて絵画を志した松本は17歳のときに上京。戦中戦後の困難な時代のなかでも明確な意志を貫き、死の間際まで精力的に活動を行った。

 身近なもの、風景、人物が描かれた静謐な絵画空間で、いまもなお多くの人々を魅了しつづける松本作品。今年から来年にかけて、群馬県桐生市の大川美術館では、松本の没後70年および大川美術館開館30周年記念企画として、「アトリエの時間」「読書の時間」「子どもの時間」「街歩きの時間」の4つのテーマに沿って、松本の展覧会を開催している。

 その幕開けとなる展覧会「アトリエの時間」が10月13日にスタート。本展では、当時のアトリエと同じ大きさのスペースが設けられ、イーゼル、パレット、机、500件におよぶ書籍に加え、アトリエに置かれていた壺や古道具、ペンにいたるまで、総計70件を超えるモノが作品とともに展示されている。

 松本が生前に多くの時間を過ごした「アトリエ」という空間で、松本の思索の時間に寄り添いながら作品を鑑賞することができるだろう。

松本竣介 立てる像 1942 神奈川県立近代美術館蔵