2018.3.6

アートフェア東京2018、注目の初出展ギャラリーをピックアップ

今年で13回目を迎える日本最大級のアートフェア「アートフェア東京2018」では、過去最多となる164の出展者が集う。ここでは初出展となる29ギャラリーの中から、とくに注目したい7ギャラリーをピックアップして紹介する。

Kiiro SAKURA_02 ©Kiiro Courtesy of EMON Photo Gallery
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 「アートフェア東京2018」(AFT)は、大きく古美術、工芸、日本画、近代美術、現代アートまで様々なジャンルの作品が集まる「ギャラリーズ」と、気鋭の作家の個展で展開する「プロジェクツ」の2つで構成されている。過去最多となる164のギャラリーが参加するなか、初出展となるのは29ギャラリー。ここでは、この「ギャラリーズ」「プロジェクツ」からそれぞれ注目ギャラリーをピックアップ。その展示内容とともに紹介する

|ギャラリーズ

KIYOSHI ART SPACE

 KIYOSHI ART SPACEは、2017年に関藤清によって東京・西麻布にオープン。日本および中国で活躍する新進アーティストをセレクトし、アジアにゆかりのある個性豊かなアート作品や、様々な出会いやきっかけを生む場を目指して活動している。AFTでは、ヘヴィメタルバンド「Medusa`s Child」の中心メンバーである、ドイツ出身で現在上海在住のアーティスト・CROWのほか、feebee、蓮羊、奥村彰一、陳卓、汪楚雄ほかを出品する。

CROW展インスタレーションビュー

EMON PHOTO GALLERY

 写真や映像表現に特化したギャラリーとして知られるEMON PHOTO GALLERYは写真家・Kiiroと竹腰隼人の作品を展示。Kiiro(1978〜)は一貫してコスモスの花を題材にし、フォトモンタージュの技法を駆使して絵画に迫る作品を数多くつくり上げてきた。印象派の絵画を思わせる写真表現はベルギーやフランスなど、海外アートフェアでも好評を博している。今回出展するシリーズ作品「SAKURA」は、ふたたび原点に帰り、日本の象徴である桜に初めて挑んだ野心作。4メートルを超える大型屏風作品をメインに、桜を通じて死生観を表した9作品を出品する。また、写真家・竹腰隼人(1987〜)は同じ桜をモチーフとしながらも、心象風景を表した写真作品3点を展示する。

竹腰隼人 SAKURA ©Hayato Takekoshi Courtesy of EMON Photo Gallery

CAI現代芸術研究所 / CAI02

 CAI現代芸術研究所は、2000年に北海道・札幌で北海道発の現代美術の研究所として誕生。08年には札幌市内大通にCAI02ギャラリーをオープンし、企画展示と交流の場としてのカフェ運営などを行っている。AFTでは、第52回ヴェネチア・ビエンナーレ出品作家、岡部昌生が70年代にパリで制作したフロッタージュ作品《La Peau des murs 壁の皮膚》をはじめ、札幌を拠点とし、「あいちトリエンナーレ2016」「札幌国際芸術祭2017」などに参加した端聡、僧侶としても活動する風間天心の作品を展示。北海道の創造性を東京で発信する。

岡部昌生 函の壁 1964-2008 水脈の境界面 撮影=小牧寿里

|プロジェクツ

Nii Fine Arts

  2012年に大阪市にオープンしたNii Fine ArtsがAFTで見せるのは、1984年生まれのアーティスト・国本泰英だ。国本は、行列などをシルエットで描いた群衆の絵画によって、個人であると同時に集団でもある人間の存在を問いかける作品を制作。また、スポーツをモチーフにその所作を描くことで、人体のフォルムの美しさを感じとれる作品も多く手がけている。

国本泰英 すもう 2018

Yutaka Kikutake Gallery

 数多くのギャラリーが集まる東京・六本木のピラミデビル。ここを拠点に、2015年から活動しているYutaka Kikutake Galleryは今回、向山喜章のキャンバス作品を展示。1968年生まれの向山は、幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する仏教美術に触れてきた。その原体験が、初期より一貫してモチーフとして扱ってきた光という根源的な存在態へとつながっているという。ワックスを素材に用いた作品でそのキャリアを築いてきた向山だが、近年はキャンバスを用いた作品も発表。AFTでは、ワックスからキャンバスに移行する当初の作品シリーズ「Karukaze」を紹介する。

向山喜章 Karukaze-46 RAINBOW 2015 キャンバスに水彩、アクリル 46x46cm ©Kisho Mwkaiyama Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery

Gallery花影抄

 東京・根津で「根付」を中心に彫刻作品を扱うGallery花影抄が見せるのは1986年生まれの彫刻家・永島信也。永島は京都造形大学彫刻科を卒業後、独学で根付彫刻を学び、現代根付の世界で新境地を開いていきた。デビュー当初から「美少女フィギア」のような作風根付彫刻を主に発表。 二次元的イメージより着想を得た美少女モチーフは、日本的なサブカルチャーを反映するだけでなく、ジャンルの境界(彫刻・工芸、フィギュア・模型・人形等)に縛られない表現への挑戦でもある。AFTでは、鹿角や木を素材にした根付と小型彫刻を展示する。

永島信也 ウカノミタマ 2018

スプラウト・キュレーション

 東京をベースに、現代美術のキュレーションと、アートディレクション&グラフィックデザイン、そして編集&コピーライティングを中心に活動するスプラウト・キュレーション。AFTでは日本の戦後芸術において 「具体」「もの派」と肩を並べて重要な「舞踏」にフォーカス。1954年生まれの舞台写真家・池上直哉の貴重なアーカイヴから、土方巽演出の大野一雄『ラ・アルヘンティーナ頌』(1977)のエディションのほか、田中泯など日本の身体芸術の記録写真を出品する。

1977年の『ラ・アルヘンティーナ頌』より