2018.1.18

静かな詩情をたたえる木版画の世界。清宮質文の生誕100年を記念した大回顧展が茨城で開催

詩情あふれる木版作品で知られる清宮質文の生誕100年を記念する大回顧展「生誕100年 清宮質文 あの夕日の彼方へ」が茨城県近代美術館で開催。木版、水彩、ガラス絵など191点が展示される。会期は2月23日〜4月8日。

清宮質文 さまよう蝶(何処へ―夢の中) 1963 木版、紙 茨城県近代美術館 照沼コレクション
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 1917年東京都に生まれた清宮質文(せいみや・なおぶみ)は、東京美術学校で油絵を学び、戦後、教員生活を経て53 年より制作に専念し、本格的に木版画に取り組む。

清宮質文 孤独な魂 1956 モノタイプ 照沼毅陽氏蔵

 生誕100年を記念して開催される本展では、年代順に制作テーマの変遷を追いながら、木版の代表作に加え、水彩、ガラス絵など191点を紹介。水戸藩の支藩である守山藩士の末裔でもあり、水戸の地を繰り返し訪れていたという清宮を、ゆかりの作家として紹介する茨城県内初の回顧展となる。

清宮質文 夕日と猫 1979  木版、紙 茨城県近代美術館 照沼コレクション

 油性のインクではなく透明水彩を用い、摺りごとに微妙に色調を変えることで、詩情あふれる作品を生み出した清宮。版による複製性よりも、「彫り」の線や「摺り」による色の重なりといった版画ならではのイメージのなかに表現の可能性を追求し、1枚あるいは数枚しか摺られなかった作品も多い。

清宮質文 山上の湖 1981  木版、紙 茨城県近代美術館 照沼コレクション

 本展では、同じ版の異なる摺りの作品や、版木もあわせて展示。「木版多色刷り」の技法について知ることができるとともに、清宮の制作の現場を垣間見ることができる貴重な機会となる。

清宮質文 深夜の蠟燭 1974 木版、紙 茨城県近代美術館 照沼コレクション
清宮質文 窓辺の燭台 制作年不詳 ガラス絵 個人蔵