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ゆっきゅんと巡る、出光真子の作品世界【前編】学芸員のレクチャーで紐解く、先駆的映像作家の軌跡と葛藤【2/3ページ】

フィルム作品からビデオ作品へ

遠藤 初期のフィルム作品は、主婦として育児と家事をこなすなかで残された「こま切れの時間」で撮りため、つなぎあわせた実験的な作風が特徴です。実際にカメラを回す出光さんの周りを子供たちが走り回るなか撮影することもあったといいます。

出光真子《Still Life》(1993〜2000)ミクストメディア

田坂 フィルム作品と、その後のビデオ作品がガラッと違うのも印象的です。また、出光さんの作品は、花をテーマにしたものも多い。映像として花を映し出す場合もありますし、インスタレーションの一部として用いることもあります。今回出展しているインスタレーションの《Still Life》(1993〜2000)で使っているバラの花は、発表当時の展覧会では本物を使っていたそうです。

出光真子《おんなのさくひん》(1973)シングルチャンネル・ビデオ 11分

遠藤 《おんなのさくひん》(1973)は、初めて出光さんが手がけたビデオ作品です。フィルムとビデオでは質感が全然違うと気づき、ずっと撮ってみたいと思っていた「トイレのなかを流れていくタンポン」を撮影しています。モノクロで「粗い質感の映像が撮れるビデオを用いることで、水墨画のように抽象的な絵柄が生まれるのも面白いと思ったし、周りに男性作家しかいなかったなかで、女にしかつくれない作品になる」と本作を思いついたと出光さんは語っています。これは、最初に撮ったビデオ作品ということもあり、出光さんのその後の方向性を決定づけるような作品だと思います。

出光真子《主婦の一日》(1977)シングルチャンネル・ビデオ 9分50秒

田坂 国際的に注目されているのが、モニターの入れ子構造を採用した《主婦の一日》(1977)。マーサ・ロスラー《キッチンの記号論》(1975)や、シャンタル・アケルマンの《ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地》(1975)など、台所と主婦をテーマにした作品と並べて語られることも多いですね。ただ、出光さんご自身はあくまでも、自分が日常をどう見つめ、考えるかに向き合っていたのではないかと思います。

 その後、離婚し、活動の拠点を日本に移してからは、80年代にかけて物語性の強い長尺のビデオ作品を撮るようになります。出光さんはもともと小説家をめざしていて、近年は実際に小説を書かれています。今回改めて展示を見渡してみて、そのことに納得しました。

遠藤 映像作家として最後に発表した作品《直前の過去》(2004)では、自身の出自に関わる主題を扱っています。家父長制や、戦時下に満州に進出した出光興産と戦争の関わりなど、自身の家族を批判的に描かれた作品です。最後の作品で、自身の出自という非常に個人的なテーマを扱い、個人的なことが政治的なことにつながるという制作姿勢の一貫性と覚悟に深い感銘を受けます。出光さんは30年以上にわたり、約50点の作品を制作しました。本展では、展覧会と上映会あわせて全43点(インスタレーション展示5点を含む)を紹介しています。

編集部